休憩時間(昼休み)のケガは労災になるの?

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昼休み(休憩中)にケガをした。

これって労災(業務災害)にならないんじゃないの?という質問がありました。

仕事中でもないし、仕事でケガしたのではないから労災(業務災害)にならないのじゃないかなと・・・。

休憩時間のケガでも労災になるものと労災ではないものもあります。

業務災害(労働災害)とは?

労災(労働災害)には業務災害と通勤災害の2種類があります。

業務災害であるとは、労働者がケガをしたり病気になったことと業務との間に相当因果関係があるということです。

相当因果関係があるかどうかは、業務遂行性と業務起因性の2つで判断されます。

業務災害 業務遂行性があること。そのうえで業務起因性があること。
業務遂行性 労働者が事業主(会社)の支配・管理下にあること。
業務起因性 業務が原因となって労働者がケガをしたり病気になったこと。

業務遂行性>とは、労働者が事業主(会社)の支配・管理下にあることをいいます。

労働者が労働契約にもとづいて事業主の支配下にある状態は、業務遂行性があります。

業務起因性>とは、労働者がケガをしたり病気になったことの原因が業務にあることをいいます。

労働者が労働契約にもとづいて事業主の支配下(業務遂行性)にあることにともなう(内在する)危険が現実化した事故(ケガや病気)には、業務起因性があります。

業務災害とは、事故(ケガや病気)と業務との間の相当因果関係があること、その判断基準となる業務遂行性と業務起因性があることです。

休憩時間でも労働災害(業務災害)となる場合

休憩時間におきたケガでも、業務災害(労働災害)となる場合とならない場合があります。

休憩時間とは

休憩時間とは、労働者の権利として労働からはなれることを保障されたものです。

労働者が自由に利用できる時間でなければ休憩とはいえません。

労働基準法34条(休憩)

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

休憩時間のケガは原則として労働災害にならない

休憩時間とは、労働者の権利として労働からはなれることを保障されたものです。

休憩が労働者が自由に利用できる時間なのであれば、労働者が事業主(会社)の支配・管理下にないので<業務遂行性>がありません。

業務遂行性がない事故(ケガや病気)は業務起因性(業務に原因)がありませんので、業務災害(労働災害)とはならないのです。

休憩時間でも労働災害(業務災害)となる場合とは

しかし、休憩時間中の事故(ケガ)なら労災(業務災害)にならないか?というとそうでもありません。

休憩時間であっても業務遂行性と業務起因性のある事故(ケガ)は労災(業務災害)です。

事業場施設のなか(休憩室や空き会議室、自分の机など)にいる、事業主(会社)が管理している場所(工事現場など)で休憩中に食事をするなどしてすごしている場合は、事業主の管理下・支配下で行動していることになりますので<業務遂行性>があります。

事業場施設・事業主管理場所の施設・設備の欠陥などの状況が原因とする事故(ケガ)は<業務起因性>があります。

休憩中の事故(ケガ)であっても、事業場の施設・事業主が管理している場所(工事現場など)の施設・設備の欠陥などが原因で発生したものは事業主の支配下にあることにともなう危険が現実化したものですから業務災害(労働災害)です。

同じ休憩中の同じような事故(ケガ)でも労働災害(業務災害)となるかどうかがわかれます。

たとえば、食事のために外出して道路を歩いていてころんでケガをしたときは労働災害(業務災害)ではありません。

しかし、外出して食事したあとに戻ってきて会社の階段でころんでケガをしたときは労働災害(業務災害)です。

食事するために外出してレストランに行ってイスに座ろうとしてころんでケガをしても労働災害(業務災害)にはなりません。

同じ食事でも、会社の休憩室でイスに座ろうとしたときにころんでケガをしたら労働災害(業務災害)です。

厚生労働省の通達

[基災収]((旧)労働省労働基準局労災補償部長が疑義に答えて発した通達)に、以下のようなものがあります。

休憩時間中水汲みに行って転落した日雇労働者の死亡

<問>

被災者Nは、石切り場の職人の手伝いとして働いていた。

石切り場は断崖絶壁で、作業場は海面から約二五メートルの高さのところにある。

Nは同僚中で一番若かったので、夏の暑い時は朝ヤカン一杯の飲料水を持って現場に上り、昼食時には下りて休憩し、仕事にかかるときは再び飲料水をヤカンで持って上っていた。

暑い時などは途中で汲みに下りることもあった。

当日(九月一九日)は、曇っていたので昼まで飲料水は不用であろうと思って発破用の塩水だけを持って上っていたが、九時一〇分から二〇分頃休憩になったとき、誰かが「咽喉が渇いたな」といいだしたので、Nはヤカンを持って下へ降りて行き、山の方へ帰りかけた瞬間転落し、後頭部を粉砕して死亡した。

<答>

業務上である。

(昭24・12・28基災収第4173号)

道路の傍らで休憩していた道路清掃日雇労働者の自動車事故

<問>

道路清掃工事の日雇労働者である被災者は、同僚一六名と作業に従事し、正午から全員休憩した。

各作業員は、道路に面した柵にもたれ、あるいは座して昼食休憩していたが、一二時三〇分の作業開始時間になっても、作業監督者が現場に到着して作業開始を命ずるのは午後一時近くになるのが常態であった。

当日も、所定の休憩時間をすぎており、責任者がくればすぐ作業にかかる態勢にあったところ、曲り角を疾走してきた乗用車が運転を誤って労働者の休憩していた場所に突入して柵に激突、被災者は逃げおくれて柵と自動車にはさまれ胸骨骨折の負傷を受けた。

<答>

業務上である。

(昭25・6・8基災収第1252号)

昼食中の岩石落下による死亡

<問>

被災者は、海岸道路の開設工事において、海岸に接した山を切り崩し海岸側に胴込石積を行なう作業に従事していたが、一二時に監督のIから昼食休憩の指示があったので、作業場のすぐ近くの崖下の少し平らになっているところで昼食の弁当を食べ始めた。

そのとき、崖の上部にあった重量約五〇貫の岩石が落下し、岩石とともに約一メートル下の積石上に下向きに転落死亡したものである。

作業場には休憩所及び事務所の設備があるが、事務所は約一八〇メートルはなれており、また休憩所は小高くなっているところにあるため、被災者たちは休憩所まで行くのに歩きにくい坂道(道らしいものはない。)を登って行かねばならないため、たいてい現場の日陰になっている崖下等を利用して休憩昼食を行なっていたものである。

<答>

業務上である。

(昭27・10・23 基災収第3552号)

×「休憩中(昼休み)にケガをした」のは労働災害(業務災害)ではない。

○ 業務遂行性と業務起因性があれば「休憩中(昼休み)にケガをした」のは労働災害(業務災害)です。

【編集後記】

きのうは用事で出かけて、桜が咲くなかを走る路面電車を見ました。

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今朝は歩いて近所の桜を。

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ジョギングよりもゆっくりと歩いて景色を楽しみたい季節です。

昨日の1日1新 正八幡神社

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格