事業主による暴行死 労災になるかならないかの分かれ目はなにか

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他人から暴行を受けてケガをした場合は、労働災害になるのでしょうか?

鳶(とび)職人・左官工として働いていた労働者が、事業主による暴行死が労働災害になるのかならないのか。
実際に争われた事件から考えてみます。

この労働者が倉庫で資材を片付けていましたが、所定の場所と違う所に置こうとしたことから、同僚から口頭注意を受け、事業主から説教を受けました。

その後この労働者は別の場所で日頃の態度について事業主から説教を受け暴行を受けました。

また移動を重ねながら、事業主らは飲酒をしながら殴る蹴るの暴行を加えて、この労働者は死亡しました。

この場合、労働災害として認定されるのか、されないのか。

先に結論を言うと、労災申請するかしないかの段階では判断は難しいのではないか、ということです。

労災として認定されるかどうかという判断の考え方の枠組みは、これから以下に書きますが、この判断基準があっても、労災申請して、労働基準監督署長は労災ではないとして支給しないという処分をして、労働保険審査官もこれを支持しました。

最終的には、労働保険審査会で労災であるとして労災保険支給するという決定をしました(支給しないという処分を取り消した)。

どうせ、労災認定されないよ、と言われて申請を諦めてしまうのではなく、

労災として認定されるかどうかという判断の考え方の枠組みを知り、この要件をみたしていることを明らかにするように申請していく努力はして、労災申請することを諦めてしまわないようにすることが大切だと思います。

業務災害とは、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等

労働者災害補償保険法

第一条 労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

業務上の事由による = 業務遂行性 + 業務起因性

業務上の災害というためには、その業務と災害との間に相当因果関係が認められるか否かを判断することになります。

業務上の災害(ケガ、ケガによる死亡)と認められるためには、業務遂行性及び 業務起因性が認められることが必要です。

業務起因性

「業務上の事由」によると言うときの、業務上とは業務が原因となったという意味であり、業務とケガ・病気・死亡などとの間に一定の因果関係があるという意味です。

業務とは広い意味で使われる言葉です。

今回の事件では仕事は終わっていて、酒を飲んでいる酔っ払っている相手から暴行・傷害を受けて死亡した事件でですが、常軌を逸した暴力行為であるが目的が指導という業務によるケガ・死亡として業務起因性が認められています。

“それは業務ではない”と簡単に決めてかかるものではありません。

業務遂行性

労働者が使用者の支配下にあること。
(被災労働者が使用者との間で労災保険給付の対象である労働関係にあること。)

事業主による暴行死 労災になるかならないかの分かれ目はなにか

他人の故意に基づく暴行によって被った負傷が労働災害となるための要件

(平成21年7月23日基発0723号第12号)

業務に従事している場合又は通勤途上である場合において被った負傷であって,他人の故意に基づく暴行によるものについては,当該故意が私的怨恨に基づくもの,自招行為によるものその他明らかに業務に起因しないものを除き,業務に起因する又は通勤によるものと推定することとする。

業務に従事している場合(業務災害)
通勤途上である場合  (通勤災害)

(1)(2)(3)を除き,
他人の故意に基づく暴行によって被った負傷は、業務に起因する又は通勤によるものと推定する

(1)私的怨恨に基づくもの,(個人的な恨みによる暴行)
(2)自招行為によるもの  (例えば、喧嘩を売るなど)
(3)その他明らかに業務に起因しないもの

労災だとして本人(遺族)が労災申請しないことには、労災として認められることはありません。

労災は認定されるようにできるだけの準備はして、労災申請はするということが大切です。

今回の事件は厚生労働省ホームページの中の
労働保険審査会 業務上外(平成29年裁決)から見ることができます。

とび・左官工として就労していた者の事業主の暴行による死亡

実際に読んでみていただきたいと思います。

再審査請求の理由、原処分庁の意見、審査資料、事実の認定及び判断の当審査会の事実の認定、がそれぞれ(略)となっていて、読むことができませんので、読んでも判然としません。

しかし、他人の故意に基づく暴行によって被った負傷が労働災害となるための要件という規範があっても、それをどう当てはめるか、規範と当てはめを見てみると、労災になるかならないかの分かれ目は、事件ごとにそうはっきりとしていないようにも見えます。

最初から、諦めないことが大切なように思われます。

参考文献

【編集後記】

他人から暴行を受けた事件が労働災害として認められるかどうかという問題を今回見ました。

労働災害になろうがなるまいが、暴行・傷害は犯罪です。

刑事罰を受ける犯罪です。
不法行為として損害賠償請求の対象です。
労災保険から保険給付があっても、慰謝料などは労災保険には含まれていませんし、労災保険給付とは別に損害賠償請求すべきものです。
こちらは弁護士に相談してみてください。

加害者が損害賠償するお金がないという場合など、労災認定されることで慰謝料などは含まれませんが労災保険からの補償を受けられるということが大切な場面となることがあります。

加害者に損害賠償請求した場合は、労災保険からの給付分を差し引かれた額で損害賠償額が計算されますが、慰謝料はそもそも労災保険から給付がありませんし、労災保険からの給付がすべて損害賠償額から差し引かれるものでもありません。

また、労災保険か損害賠償かという二者択一ではありません。

新宿西口から見る東口歌舞伎町方向
写真の中にビルの上に小さいですがゴジラの頭があります。
今日は東京は寒い1日でした。

今日の1日1新:新宿西口 らーめん 十味や 辛みそラーメン (激辛でした。つらかった。)

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小倉 健二 ( 特定社会保険労務士 )東京都 ※相談は新宿近辺にて

小倉健二(おぐらけんじ) 1965年生まれ54歳。連れ合い(妻)と子ども2人。 労働者の立場で労働問題に関わって30年。 2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格
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