2021年に発生した労働災害の速報値が2022年1月20日に厚生労働省から発表されました。
速報値は2021年に発生した労働災害について2022年1月7日までに報告があったものを集計したものです。
2021年労働災害の死傷者数は2020年と比べて18%増加しています。
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【2021年】労働災害で亡くなった方は779人
2021年に労働災害で亡くなられた方が779人(前年同期比6人増加)いらっしゃいます。
死亡災害で一番多い事故が、墜落・転落。
墜落・転落の次に多い死亡事故が、はさまれ・巻き込まれ、交通事故(道路)です。
2021年に労働災害で亡くなられた方が779人。
たくさんの方が労働災害で亡くなったということは集計から知ることができますが、死亡事故の重みは数字の多さではありません。
たとえ1つの事故であっても、二度と戻ることがない命が奪われたということを想像してみてください。
労働災害による死亡は1件でも許されるものではありません。
死亡災害が一番多いのは建設業で、死亡者数が274人。
2021年に発生した建設業での死亡災害の事例を5月19日時点でまとめて発表されている東京労働局の資料を見てみましょう。
「令和3年に発生した主な建設業死亡災害事例(5月19日時点)」 東京労働局
たった1つであっても絶対に起きてはいけない死亡事故。
生きるため(給料を受けとって生活するため)に働くのに、働くことが原因となって死ぬ。
働くことであなたが亡くなることは絶対にあってはいけません。
そして、これから先に一度も会うこともない見知らぬ誰であっても、働くことで亡くなることがあってはならないのです。
労災事故で死亡者が出ることを前提に、死亡時に支出する経費として人の命を計算させるような仕事を許してはいけません。
働くことで亡くなる方が1人でもいないための職場づくりを使用者(会社)にさせることが重要です。
そして、自分の命もまわりの人の命も仕事で奪われることがないように「無理な仕事はしない、危ない仕事はしない」決意が必要ではないでしょうか。
【2021年】休業4日以上の死傷者数135,358人(前年対比18%増加)
休業4日以上の大きな労災事故。
休業4日以上の死傷者数が135,358人増加しています。
前年対比で18%の増加です。
労働災害の事故の型としては、転倒が一番多く全体の22%を占めています。
転倒による労働災害で休業4日以上の死傷災害に遭った方は2021年で30,115人です。
「転んでケガしたのは不注意だから労災じゃない」などと会社に言われて労災申請できなかったという相談が労働者の方からときどきあります。
2021年の労働災害発生状況についての厚生労働省の1月速報値を見てもわかるように、休業4日以上の大きな労災事故で一番多いのが転倒によるケガです。
通勤や仕事で「転んでケガした」は労災です。
必ず労災申請(労災保険の給付請求)をしましょう。
【2021年】<第三次産業>休業4日以上の死傷者数71,772人。前年対比27.5%増加
第三次産業での休業4日以上の死傷者数71,772人。
前年対比で27.5%増加。
労働災害発生状況 (休業4日以上の死傷災害) |
2020年 | 2021年 | 増減(人) | 増減(%) |
---|---|---|---|---|
第三次産業 | 56,302 | 71,772 | 15,470 | 127% |
製造業 | 23,281 | 26,098 | 2,817 | 112% |
建設業 | 13,684 | 14,856 | 1,172 | 109% |
陸上貨物運送事業 | 14,398 | 15,325 | 927 | 106% |
その他(林業など) | 7,004 | 7,307 | 303 | 104% |
全体 | 114,669 | 135,358 | 20,689 | 118% |
2021年の第三次産業での休業4日以上の死傷者数は、2017年同期比で45.3%も増加(22,372 人増加)しています。
「サービス業(第三次産業)は労災と関係ない」と思っている方。
第三次産業が休業4日以上の死傷者が一番多い業種です。
事務員の方が事務所の階段で転んで捻挫した。病院で治療を受けて何日か療養のために会社を休んだ。
こんな場合も労災です。
病院の診療費・薬局の薬代は無料。
医師から言われて療養のために会社を休んで給料を受けとれなかったら給料の代わりの約6割を会社から受けとれる。4日目からは労災保険から給料の約8割を受けとれる。
第三次産業の方も、かならず労災申請(労災保険の給付請求)しましょう。
【編集後記】
週末にKindleでマンガ『ベルリンうわの空』(香山哲さん)1巻目を読みました。
Amazon ベルリンうわの空
外国の都市(ベルリン)で生活する著者の日常が描かれています。
どこにでも外国人を差別する人はいるものでしょうが、著者が受けた差別について少しだけふれられています。
日本人が外国でくらすときに、親切に迎え入れてくれたらいいなぁと思いますが、
振り返ってみると、私たちが外国人に対する態度はどうかな。
外国人労働者の人権侵害を考えても、「外国人」の話で「私たち」には関係ないと思わないことが必要だなと。
そういうことを描いているマンガではないのですけれども。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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