2021年の熱中症による労災(労働災害)の死傷者は2020年と比べて4割へりましたが、それでも死傷者は561人もいます。
仕事が原因で熱中症になった場合には、労災申請しましょう。
労災による熱中症の医療は無料でうけられます。
療養のために休んだ日は給料の8割が支給されます。
Contents
2021年の熱中症による労災死傷者は前年比41%減だが561人もいる
厚生労働省が2021年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を5月31日に公表しています。
2021年の熱中症による労災死傷者は、前年比41%と大幅に減っています。
しかし、減りはしたものの561人もの死傷者が発生しています。
今年2022年の熱中症による労災死傷者が増加するのかさらに減少するのかは来月7月からの発生数によりますが、職場における熱中症予防へのとりくみ重要なのはどの年でも同じです。
5月〜9月はSTOP!熱中症 クールワークキャンペーン として取り組みを呼びかけています。
7月はこのキャンペーンの重点取組期間です。
熱中症による労災死傷者は7月・8月に集中
もうすぐ7月になります。
熱中症による労災死傷者の発生は、7月・8月に集中しています。
熱中症による労働災害は、午後2時〜4時がもっとも多く死傷災害が発生しています。
しかし、それ以外のどの時間でも発生していますので、注意が必要です。
【2021年の熱中症による労災死亡20人】熱中症は死亡つながる危険な災害
2021年の職場での熱中症による死傷者は561人。
死傷者とは、死亡災害と休業4日以上の災害に遭った方を合わせたものです。
死亡者20人をふくめ休業4日以上の死傷者が、2021年1年だけで561人もいます。
熱中症による労災は、死亡をふくめ休業4日以上となる危険な災害です。
熱中症による労災の死傷者561人のうち死亡者は20人。
年齢でみると、50歳代の7人が最多で40歳代60歳代と続きますが、10歳代でも死亡者がいます。
熱中症による労災はどの年齢でも注意が必要です。
2021年の熱中症による労災死亡20人の事案の概要
2021年の熱中症による死亡災害の概要 型枠解体作業中、現場主任者が、被災者の 動きが鈍く怠そうな様子であることに気がつ いたため、現場の休憩所で休憩させた。約10分後、現場主任者が被災者に声をかけて体を ゆすると倒れこみ、動けない状態となったた め救急搬送したものの、数日後に死亡した。 午前中に建物の基礎のコンクリート打設補助作業に従事し、昼休憩のため休憩所に向かった。数分後、同現場の作業者がぐったりしている被災者を発見し、すぐに救急搬送したものの、数日後に死亡した。 午前中に屋外の工事現場内において、材料空き袋の片付け等の軽作業に従事した。昼休憩に入る際に体調不良を訴えたため、空調の効いた社有車内において氷水等で身体を冷やすなどしていたが、しばらくして呼びかけに反応がなくなったため、病院へ搬送したものの、数日後に死亡した。なお、被災者は当該作業に従事し始めて5日目であった。 屋外で洗車の作業を行っていたところ、同僚により倒れているところを発見された。被災者は自力で休憩室に移動し、休憩していたが、症状が悪化したため同僚が救急搬送を手配した。入院していたが数日後に死亡した(熱中症により倒れた際に負った頭部の外傷によるもの)。 なお、被災者は4日以上の休暇後の作業初日であった。 擁壁の改修作業中、事業者が、被災者の具合が悪そうであることに気がついたため、現場近くの民家の玄関前で休憩させた。約2時間後、事業者が被災者に声をかけたところ意識がなかったため、救急搬送したものの、同日中に死亡した。 なお、被災者は当該現場に入場して1日目であった。 事業場構内で、搬入された古紙の選別作業等に従事していたところ、昼食をとれない程度の体調変化を生じていたものの、終業時刻まで勤務し帰宅した。翌日、事業者が被災者の様子がおかしいことに気がつき、早退させ、医療機関を受診させたが熱中症に関する診断はされなかった。さらに翌日、再度医療機関を受診したところ、脱水症状があると診断され、点滴を受けている最中に容態が急変し死亡した。 事業場資材置場内で型枠資材の整理作業を終え、敷地内の休憩室に戻ろうとした際、脱水症状を発症したため、同僚が休憩室内で給水等の手当を施したところ、被災者は快方に向かったため帰宅したが、翌日容態が急変し、救急搬送されたものの死亡した。 道路沿いの土地で手押し式草刈機を用いて草刈作業を行っていたところ、被災者がふらついたため、近くに停車していたパッカー車内で冷房をつけて休憩をさせたが、意識が朦朧となったため、救急搬送したものの同日中に死亡したもの。 炎天下の工事現場においてポリエチレン管の組立て作業等に従事後、道具の片付けを行っていたところ、職長が、被災者がふらついていることに気づいたため、休憩室に連れて行こうとしたが、その途中、被災者が倒れ込んだ。救急搬送されたものの、数日後に死亡した。なお、被災者は当該現場に入場して2日目であった。 選果場内で選果作業を行っていたところ、意識不明となり倒れ、呼びかけにも反応がなく、医療機関に搬送中に心肺停止状態となり、死亡した。 なお、被災者は当該作業に従事し始めて2日目であった。 建築工事において、午前中に基礎工事部分 の型枠の枠組み作業を行ったのち、午後から コンクリートを打設するため、猫車を用いて コンクリートの運搬作業を行っていたとこ ろ、同僚が、被災者がふらついていることに 気づいたため休ませた。被災者は現場横の日 陰で横になったが、約 10 分後に同僚が様子を 見に行ったところ意識がなかったため、緊急搬送されたが、死亡した。なお、被災者は当該作業に従事し始めて2日目であった。 工事現場の警備員として道路上で交通誘導業務を行っていたところ、路肩の法面の下にある側溝に転落し倒れているところを発見され、直ちに救急搬送されたが熱中症により死亡した。なお、被災者は当該作業に従事し始めて2日目であった。 ビニールハウス内において野菜の収穫、誘引作業を行っていたところ、同僚が座り込んでいる被災者に気づき、休憩するように言ったところ、被災者はビニールハウス外の冷房の付いていない車内などで休憩していたが回復しなかった。その後、自力で休憩室に行き、保冷剤で体を冷やしたところ、やや回復したため、送迎車で帰宅する途中、車内で意識を失い、救急搬送したものの死亡した。 船体ブロックのトップ上で、玉掛用ピースのガス溶断作業中、同僚に体調不良を訴え、日影に座ったが、そのまま倒れ込み嘔吐した。現場で身体を冷やすなどの応急処置を実施し、救急搬送したものの同日中に死亡した。 アパートの改修工事現場において道具や材料の片付け等の作業を行っていたところ、体調が悪くなり、事業者に休憩するよう指示された。被災者は飲料を購入するため、現場近くの自動販売機まで歩いていたところ、道中で意識を失い倒れた。通行人が倒れている被災者を発見し、救急搬送されたが、翌日死亡した。なお、被災者は当該現場に入場して4日目であった。 屋根に設置された太陽光パネルの点検清掃作業等を行っていたところ、倒れているところを発見され、病院に搬送されたが死亡したもの。 菌床椎茸の製造工程において、圧力容器で 殺菌した菌床を圧力容器から取り出し、圧力 容器の扉を閉めようとしたが閉め方が分から ず、当該室内に計 25 分程度滞在していた。そ の間、圧力容器から出てくる熱風により室温 が上昇していた。工場長が倒れている被災者 を発見し、救急搬送されたものの、数日後に 死亡した。 苗木生産ほ場内において、日陰での除草作業や日向の場所での植木の掘り取り作業を行っていたところ、親会社の職員が作業小屋付近の道路上に仰向けで倒れている被災者を発見し、救急搬送されたが、同日中に死亡した。 基礎コンクリート打設に付随する作業に従事していたところ、同僚により倒れているところを発見され、救急搬送されたものの数日後に死亡した。 なお、被災者は当該現場に入場して2日目であった。 木造住宅建設工事現場において、地上で仮設電柱に分電盤を取り付ける作業中に倒れ、熱中症により死亡した。
気温と湿度の関係から計算されるWBGT値(℃)が高いと、熱中症になる危険が大きくなります。
しかし、WBGT値が必ずしも高くなくても熱中症による死亡災害が発生しています。
厚生労働省の「2021年の熱中書による死亡災害の事例」を見て確認してみましょう。
「令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」厚生労働省
仕事が原因の熱中症は労災。労災保険からの給付を求めて労災申請する
熱中症は労災として認められる職業病として厚生労働省が明らかにしている病気です。(労働基準法施行規則別表第1の2 2号8)
本人の持病が原因でたまたま仕事中に熱中症になっただけだということを労働基準監督署が証明しないかぎり、暑熱な場所での仕事中に熱中症になった場合は労災です。
室外だけでなく室内であっても、暑熱な場所での仕事中に熱中症になったら労災です。
労働基準法施行規則別表第1の2 2号8
暑熱な場所における業務による熱中症
労基法施行規則35条、別表第1の2第2号8は、「暑熱な場所における業務による熱中症」を業務上の疾病としているのであるから、労働者が暑熱な場所における業務に従事中、熱中症を発症して死亡したと認められる場合には、特段の反証がない限り、当該疾病は業務に起因するものと認めるのが相当である。
足立労基署長(日昇舗装興業)事件
2006年6月26日東京地方裁判所判決(確定)
平成16行(ウ)33
公益社団法人全国労働基準関係団体連合会判例検索
仕事が原因で病院で診療をうけるときには、労災であると病院に伝えます。
労災による医療は無料になります。(療養補償給付)
医師の指示で労災の療養のために仕事を休む日は、4日目から労災保険から給料の8割が支給されます。(休業補償給付)
1日目〜3日目までは会社から給料の6割の休業補償を受けとります。
仕事が原因で熱中症になったときに支給される労災保険給付、まずは療養補償給付と休業補償給付の2つを労災申請することを知っておいていただきたいと思います。
仕事が原因による知っておきたい2つの労災申請について、詳しくはこちらの記事で紹介しています。
【労働災害】仕事でケガをしたときに知っておきたい2つの労災申請
会社の責任を認めることになるのではないかと熱中症による労災申請をいやがる会社もありますが、会社の責任で発生したかどうかは労災認定には関係しません。
労災申請に必要な書類には会社の記入が必要な欄がありますので、労災申請をすることは会社の責任追及をすることではないことを説明して協力を求めましょう。
それでも、会社が書類作成に協力しないときにはどうしましょう。
会社の協力なしで自分自身で労災申請できますし、申請手続きに不安な場合は社会保険労務士に手続きを依頼することができます。安心して労災申請しましょう。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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