仕事で病気やケガをしたら労災保険から給付を受けられる。
具体的にはどんな給付があるのか?わからないという方。
労災保険給付について大まかに知っておきましょう。
療養補償給付
仕事でケガをした。
先ずは病院に行って診療(診療)を受けます。
仕事での病気やケガで受ける診療は無料になります。
無料で診療を受けられるという、労災保険からの現物支給を療養補償給付といいます。
様式第5号(療養補償給付たる療養の給付請求書)を病院に提出して診療を受けます。
処方されて薬局で受けとる薬も無料になります。
療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書 厚生労働省
仕事でケガをした(労災)。
労災保険から受けとる最初の給付が、療養補償給付です。
仕事でケガをした労災では健康保険を使ってはいけないことになっていますから、保険証(健康保険被保険者証)を出してはいけません。
労災で病院に行って診療を受けるときには、労災である、仕事でケガをしたことを病院で伝えます。
休業補償給付
仕事でケガをして病院に行った。
療養のために仕事を休むようにと医師から言われた。
診療を受けた医師から療養のために仕事を休むように指示されたら、仕事を休んだ日の最初の3日間は会社から休業補償の支払いを受けます。
休業4日目からは労災保険から休業補償給付を受けとります。
医師から指示されて療養のために仕事を休んだ期間は給料の約8割のお金が支給されます。休業補償給付です。
6割分が保険給付としての休業補償給付で2割分が休業特別支給金です。合わせて給料の約8割を受けとります。
休業補償給付を受けるためには、様式第8号を労働基準監督に提出します。
休業補償給付支給請求書 厚生労働省
【障害補償給付】病気やケガが「治った」あとの給付
療養補償給付と休業補償給付は病気やケガが治る(治癒・ちゆ)するまで受けられます。
治ったあとは病院で診療を受ける必要はありません。
病院で医師から療養のために仕事を休むように指示された日に受けとるのが休業補償給付です。
仕事でなった病気やケガが「治った」ら、治ったらあとは療養補償給付も休業補償給付が受けられない。
当たり前の話のようですが、そうとも言い切れません。
「治った」(治癒した)には「症状固定」治癒が含まれるのです。
「治った」とは、完全な回復だけでなく、症状が安定して、治療をしてもそれ以上改善が期待できない状態(症状固定)を含むとされているからです。
労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療(注1)を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態(注2)をいい、この状態を労災保険では「治ゆ」(症状固定)といいます。
したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では「治ゆ」(症状固定)として、 療養(補償)等給付を支給しないこととなっています。
(注1)「医学上一般に認められた医療」とは、労災保険の療養の範囲(基本的には、健康保険に準拠しています)として認められたものをいいます。したがって、実験段階または研究的過程にあるような治療方法は、ここにいう医療には含まれません。
(注2)「医療効果が期待できなくなった状態」とは、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいいます。
労災保険における傷病が「治ったとき」とは・・・ 厚生労働省
安易に症状固定したとされないように、少しづつでも治療によって症状が改善され続けていることを記録に残しておいて、医師にも伝えていきましょう。
さて、仕事でなった病気やケガが「治った」ら、療養補償給付と休業補償給付が受けられなくなりますが、「治った」あとに受けられる給付があります。
仕事による病気やケガが「治った」あとに受けられる給付は、障害補償給付です。
障害補償給付は、仕事による病気やケガが「治った」あとに一定の程度の障害が残った場合に労災保険から受けられる給付です。
障害補償給付が受けられる障害の程度とは1級〜14級に該当する障害が残っている状態のことです。
8級〜14級は一時金を受けとりますが、1級〜7級までは年金を受け続けることができます。
障害補償給付を受けるためには、様式第10号(障害補償給付支給請求書)を労働基準監督に提出します。
障害補償給付支給請求書 厚生労働省
【編集後記】
仕事で病気になったりケガをした労災(業務災害)。
まずは、労災保険をつかって無料で病院で診療をうけ薬局で薬を受けとります。
診療を受けた医師から療養のために仕事を休むように指示されたら最初の3日間は会社から休業補償の支払いを受けて4日目からは労災保険から休業補償給付を受けとります。
「治った」あとに一定の障害が残ったら労災保険から障害補償給付を受けとります。
万が一の場合には遺族補償給付や葬祭料・葬祭給付が支給されます。
仕事での病気やケガ。労災保険から受けられる給付について、おおまかに知っておいていただければと思います。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
最新記事 by 小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都) (全て見る)
- 【産休・育休】厚生年金・健康保険の保険料免除について知ろう - 2023年3月29日
- 2023年4月1日【出産育児一時金】8万円増額1児50万円支給 - 2023年3月16日
- 【60歳で老齢年金繰上げ受給を検討中】繰上受給したあとで障害年金請求できるか? - 2023年3月14日