労災で仕事を休んだら労災保険から給料の代わりの給付をうけられると聞いたことがあるのではないでしょうか。
業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合には休業給付が支給されます。
休業(補償)給付をうけるには3つの要件があります。
3要件をみたす労災による休業は労働基準監督署に労災申請して休業(補償)給付をうけましょう。
Contents
労災保険から休業(補償)給付をうけるために必要な3要件
労災保険から休業(補償)給付をうけるためには、3つの要件をみたす必要があります。
「療養している」こと
労働災害による病気やケガで「療養している」ことが必要です。
休業(補償)給付をうけるための要件の1つめは、労働災害によるケガや病気のために療養していることです。
「労働できない」こと
休業(補償)給付をうけるための要件の2つめは、労働災害によるケガや病気のために療養しているために労働できないことです。
労働災害によるケガや病気で療養しているために「労働できない」ことが必要です。
労災でケガをして病院に通っているけれど会社に行って仕事をしている、こんな日については休業(補償)給付はうけられません。
「賃金をうけていない」こと
休業(補償)給付をうけるための要件の3つめは、労働災害によるケガや病気で療養しているために労働できないために、賃金をうけていないことです。
ここで「賃金をうけていない」とは賃金の60%以上をうけていないことをいいます。
つまり賃金の60%未満をうけている場合は、「賃金をうけていない」ことになります。
労災保険から支給される休業(補償)給付
休業(補償)給付そのものは、給付基礎日額(平均賃金)の60%です。
労災保険法14条1項(本文)
休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給するものとし、その額は、1日につき給付基礎日額の100の60に相当する額とする。
第22条の2 1項
休業給付は、労働者が通勤による負傷又は疾病に係る療養のため労働することができないために賃金を受けない場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。
休業(補償)給付そのものは、給付基礎日額の60%ですが、給付基礎日額20%の特別支給金を受けとりますので、あわせて給付基礎日額(平均賃金)の80%が支給されます。
- 休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)×休業日数
- 休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)×休業日数
労災保険から休業補償給付(業務災害)・休業給付(通勤災害)をうけるために必要な3要件をみたすと、給付基礎日額(平均賃金)の80%をうけとることができます。
休業(補償)給付は休業4日目から支給
労災保険から休業(補償)給付が支給されるのは休業4日目からです。
業務災害の場合は、休業開始日からの3日間、平均賃金の60%以上の「休業補償」を会社(使用者)からうけとります。
しかし、通勤災害の場合は、休業開始日から3日間の休業補償は使用者の義務ではありません。
労働基準法76条1項(休業補償)
労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならない。
労働基準法75条1項(療養補償)
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
休業(補償)給付は労基署に申請する
休業(補償)給付をうけるためには、以下の3要件をみたすことが必要です。
労働災害による病気やケガにより
- 療養している
- 労働できない
- 賃金をうけていない
この3つの要件をみたすときには、休業(補償)給付をもとめて、労働基準監督署に労災申請します。
休業(補償)給付の申請は、業務災害の場合には休業補償給付支給請求書(様式第8号)、通勤災害の場合には休業給付支給請求書(様式第16号の6)に記入して労働基準監督署に提出します。
<業務災害> 休業補償給付支給請求書(様式第8号)
<通勤災害> 休業給付支給請求書(様式第16号の6)
休業(補償)給付支給請求書とその別紙に記入することで、労働災害による病気やケガにより、「療養している」「労働できない」「賃金をうけていない」ことを明らかにします。
参考「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」厚生労働省の労災保険のパンフレット
複雑なケースで労働災害による病気やケガによることを明らかにするために必要な場合などには、書式以外にも資料を作成して添付しましょう。
休業(補償)給付支給請求書の作成(記入)には、事業主による証明(記入)が必要な部分があります。
事業主には労災申請する労働者への「助力」義務と「証明義務」があります。
労災保険法施行規則23条(事業主の助力等)
(1項)保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
2項 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。
事業主には労災申請する労働者への「助力」義務と「証明義務」があるのですが、なかには労災申請に協力しない事業主もいます。
その場合には、事業主の協力なしで労働者が申請することができます。
自分だけで申請することがむずかしい場合には、労災申請にとりくんでいる社会保険労務士に手続きを依頼しましょう。
【編集後記】
朝食のときはテレビをつけているのですがニュースをみると気持ちが暗くなるので、最近はYou Tubeで猫(もちまる日記)をみています。
猫つづきというわけではないのですが、映画『ボブという名の猫』を観ました。
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「ホームレス」の主人公が猫を拾い世話をするのですが、その猫の存在が生活を立て直すうえで助けとなってくれます。
もちろん猫(ボブ)だけでなく、生活再建のさまたげとなっている問題から立ち直るための専門家からの支援、出会った友人などの支えがあります。
人や動物など、人として生きていく上で自分以外の存在が不可欠なことを感じさせてくれる映画でした。
新宿などでもみかける雑誌ビッグイシューの販売で収入をえて生活を再建していく場面も描かれています。
ホームレス状態にある人について理解できないなと思っている方も一度みてみてはいかがでしょう。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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