賃金は全額を払わなければ犯罪

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「先月はたらいた分の給料は今月はとりあえず5万円払うけど、残りの15万円は来月になるよ」こんなことを言われた。
「毎月20日〆で翌月1日払いと就業規則にさだめられているのに生活に困ってしまう」

給料(賃金)は、毎月全額受けとります。
もしも賃金全額が毎月払われなければ、それは労働基準法24条違反の犯罪です。

Chingin

賃金の全額払いをしないのは犯罪

賃金は全額を払わなければならない。
賃金は全額を、毎月1回以上きめられた日に払うことが法律で義務づけられています。

賃金から一部を差し引いて払うことが許されるのは2つだけ。

  • 法令でさだめられたもの(所得税や社会保険料など)
  • 労働者の過半数を組織する労働組合か労働者の過半数代表者との書面による協定によってさだめれたもの(たとえば労働組合費を差し引いて労働組合にわたす)

2つの例外をのぞいて、賃金を一部しか払わない・賃金の全部を払わない、これは法律違反の犯罪行為です。

労働基準法24条(賃金の支払)

(1項)賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

2項 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第90条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

労働基準法120条

次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

1号 第14条、第15条第1項若しくは第3項、第18条第7項、第22条第1項から第3項まで、第23条から第27条まで、第32条の2第2項(第32条の3第4項、第32条の4第4項及び第32条の5第3項において準用する場合を含む。)、第32条の5第2項、第33条第1項ただし書、第38条の2第3項(第38条の3第2項において準用する場合を含む。)、第39条第7項、第57条から第59条まで、第64条、第68条、第89条、第90条第1項、第91条、第95条第1項若しくは第2項、第96条の2第1項、第105条(第100条第3項において準用する場合を含む。)又は第106条から第109条までの規定に違反した者

賃金が払われていない・一部しか払われないときには労基署に申告する

賃金が全部払われていない、あるいは一部しか払われていない。

まずは賃金全額を毎月きめられた日に払うように伝えます。
それでも全額が払われないなら労働基準監督署に行きましょう。

労働基準監督署に行く前に、賃金の未払いを証明できる資料を準備します。

タイムカードなど出退勤が確認できる資料
これまで支払われてきた賃金が確認できる給与明細
賃金規定

など賃金の未払いの金額がわかる資料

たとえばタイムカードがない場合でも、メールやLINEなどの記録、それもなければ出退勤の時刻が記入された手帳など、持っているものをそろえましょう。

資料が準備できたら、労働基準監督署に行きましょう。

労働者が健康で安心して働ける職場をつくり、豊かでゆとりある生活が送れることを目指して、賃金支払いの確保等労働条件の確保・改善、労働時間対策、労働者の安全と健康の確保、迅速で的確な労災補償などに取り組んでいます。

労働行政の紹介 厚生労働省

労働基準監督署に行ったら、労働基準法違反の申告にきたので労働基準監督官に直接話しをすることを伝えます。

「相談」にきた扱いをされて、申告できずに帰されることがないようにします。

労働基準法104条(監督機関に対する申告)

(1項)事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる

2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

労働基準関係法令の履行確保は、労働基準監督官により行われます。

  • 労働者からの申告や情報の提供等を端緒として行う監督指導
  • 事案の内容が重大かつ悪質な場合に行う司法処分
  • 急迫した危険がある場合に労働災害防止 のために発する使用停止命令

労働条件の確保等のための対策 厚生労働省

賃金全額払いに違反して検察に送検された事例

賃金の一部しか払われていない、賃金の全部が払われていない。労働基準法24条にさだめれた賃金全額払の原則に違反する犯罪です。

労働基準監督官が検察官に送検した事件のなかで、都道府県労働局が公表した事例を厚生労働省がまとめています。

このなかで賃金の全額払の原則に違反して送検した事件もみることができます。

所在地 公表日 違反法条 事案概要 その他参考事項
富山県黒部市 R3.4.15 労働基準法第24条 労働者7名に、3~12か月分の定期賃金合計約5万円を支払わなかったもの R3.4.15送検
新潟県新潟市 江南区 R3.10.6 労働基準法第24条 労働者2名に、10か月分の定期賃金合計約 314万円を支払わなかったもの R3.10.6送検
新潟県佐渡市 R4.1.13 労働基準法第24条 労働者1名に、9か月分の定期賃金合計約 93万円を支払わなかったもの R4.1.13送検
新潟県胎内市 R4.1.20 労働基準法第24条 労働者4名に、1か月ないし4か月分の定 期賃金合計約165万円を支払わなかったもの R4.1.20送検
福岡県北九州市門司区 R4.1.19 労働基準法第24条 労働者1名に対し、1か月間の定期賃金合計約15万円を支払わなかったもの R4.1.19送検

労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和3年2月1日~令和4年1月31日公表分)(2022/02/28 厚生労働省)から労働基準法24条違反を抜粋し、企業・事業場名称を削除したもの。

賃金の全額払の原則に違反すると、労働基準監督署は賃金全額を支払うように指導・是正勧告をします。

それにも従わない悪質な場合は検察に送検します。そして、場合によっては労働局のホームページに公表します。

もしも、賃金が一部でも払われずにいるのでしたら、労働基準監督官に労働基準法(24条)違反で申告しましょう。

【編集後記】

今日(2022/03/15)、マスク対応のFace IDが利用できるiOS15.4にアップデートしました。
ところが、設定をいくら見てもマスク対応のFace ID利用できない。
確認してみると、マスク対応のFace IDはiPhone12以降だけだとのこと。
私のiPhoneはXsなので対象機種ではありませんでした。期待していたので残念です . . . 。

Ios15 4

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格