【労働者なのか?労働者じゃないのか?】契約の名称ではなく実態で判断

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社員ではなく劇団員として入団契約をした人が、労働者なのか労働者ではないのか?裁判で争われて、労働者であるという判決がでました。
労働基準法の労働者であると認められると、労働基準法による保護を受けられますし、労働災害に遭ったときには労災保険から給付を受けられます。

労働者性

労働基準法の【労働者】とは?

今回の裁判では劇団員の方が自分は労働者だとして未払賃金の支払いを求めました。
労働者であるとして未払賃金の支払いを命じる判決が東京高裁で出されました。(2020/09/03)

「劇団員も労働者」 劇団の運営会社に「未払い賃金」の支払い命じる…東京高裁
YAHOO!ニュース

労働基準法での労働者とは、事業に使用されて賃金を支払われる者をいいます。

労働契約法での労働者とは使用者に使用されて労働し賃金を支払われる者をいいますので、労働基準法上の労働者は労働契約法上の労働者です。

労働基準法9条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働契約法2条1項

この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法の労働者【使用従属性】で判断される

(1)使用者の指揮命令下で労働力の提供をする者
(2)労働力の提供の対償として報酬をえる者

厚生労働省の労働者性の判断基準は『「労働者」の判断基準について』(労働基準法研究会報告1985年)で確認できます。

厚生労働省の判断基準については、後ほど記事の下の方で書きます。

労働基準法の労働者、労働組合法の労働者

C   労働基準法の労働者
B+C 労働組合法の労働者

図は『労働相談実践マニュアル』Ver.7(日本労働弁護団)P10から引用作成

労働基準法での労働者であれば、労働組合法での保護を受ける労働者でもあります。

労働者基準法での労働者に該当せずに労働基準法による保護を受けない方でも、労働組合法での保護を受ける労働者に該当することもあります。

労働組合法での労働者は、労働基準法よりもより広い人が対象として含まれます。

労働組合法3条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

労働基準法 労働組合法
定義 ○職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者 で、賃金を支払われる者(第9条) ○職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる 収入によって生活する者(第3条)
解釈等

○職場における労働条件の最低基準を定めることを目的 とするため、労働基準法が定める労働条件による保護を 受ける対象を確定するための概念と解される。

○ 労働安全衛生法、最低賃金法における労働者は、労働 基準法に規定する労働者をいうと定義。労働者災害補償 保険法は労働者の定義を置いていないが、法律の目的・趣旨等から、労働基準法上の労働者を指すと解される。

平成23年厚生労働省「労使関係法研究会報告書 (労働組合法上の労働者性の判断基準について)」より

○ 売り惜しみのきかない自らの労働力という特殊な財を提 供して対価を得て生活するがゆえに、相手方との個別の 交渉においては交渉力に格差が生じ、契約自由の原則を 貫徹しては不当な結果が生じるため、労働組合を組織し 集団的な交渉を通じた保護が図られるべき者が幅広く含 まれると解される。

平成23年厚生労働省「労使関係法研究会報告書 (労働組合法上の労働者性の判断基準について)」より

判断基準 ○ 1・2を総合的に勘案することで、個別具体的に判断する。

1 使用従属性に関する判断基準
(1)指揮監督下の労働
1)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、
2)業務遂行上の指揮監督の有無、
3)拘束性の有無、
4)代替性の有無

(2)報酬の労務対償性

2 労働者性の判断を補強する要素
(1)事業者性の有無
1)機械、器具の負担関係、
2)報酬の額

(2)専属性の程度

(3)その他

昭和60年厚生労働省「労働基準法研究会報告 (労働基準法の「労働者」の判断基準について)」より

○ 1をもとに、2と合わせて総合判断する。ただし、3が認め られる場合は、労働者性が否定され得る。

1 基本的判断要素

(1)業務組織への組み入れ
(2)契約内容の一方的・定型的決定
(3)報酬の労務対価性

2 補充的判断要素

(1)業務の依頼に応ずべき関係
(2)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

3 消極的判断要素

(1)顕著な事業者性

平成23年厚生労働省「労使関係法研究会2報告書 (労働組合法上の労働者性の判断基準について)」より

『「労働者」について』(厚生労働省)

労働基準法の【労働者】に該当するか?契約の名称ではなく、実態で判断する

契約の名称が「請負契約」「委任契約」(「業務委託契約」)、劇団員としての入団契約だから、労働者ではないというのではありません。

実態として労働者であるか?

形式ではなく、実態として労働者なのかどうか?で判断されます。

10年前に決着した事件ですが、牛丼のすき家(株式会社ゼンショー)でアルバイト店員が未払賃金の支払いを求めた争いがありました。

業務委託契約であって労働者ではないと、会社側は主張しました。

当たり前ですが、会社の主張は通りませんでした。

牛丼のすき家のアルバイト店員は労働基準法での労働者ですし、労働組合法での労働者でもあります。

労働基準法と労働組合法のそれぞれの法律の保護を受ける労働者です。

会社が業務委託契約だと叫んだら労働契約でなくなる、労働者でなくなるわけではないのです。

実態として労働者であるのか労働者ではないのかで判断されます。

労働基準法の【労働者】に該当するなら、「請負契約」でも「業務委託契約」でも労災保険の給付を受けられる

労働基準法の労働者は、労災保険法の給付を受けられる労働者です。

労働基準法の労働者であるかどうかは、使用者(会社)との間に使用従属性を満たしているか?で判断されます。

使用従属性の判断は厚生労働省によると『「労働者」の判断基準について』(労働基準法研究会報告1985年)が判断基準として出されています。

しかし、労働者であるかどうか?労働者性の判断は、

裁判でも労災保険給付の労働保険審査会の裁決でも、それぞれ事例ごとに判断が分かれています。

「請負契約」だから・・・
「業務委託契約」だから・・・

などと契約の名称であきらめずに、

実体として労働者であるとあなたが考えるのであれば、労働災害に遭ったときには労災申請(労災保険給付を請求)しましょう。

労働基準監督署に労災申請して支給決定が出なければ、審査請求・再審査請求と不服申立てすることもできますので。

あきらめずに先ずはきちんと準備をして労災申請してみてはいかがでしょうか?

労災保険給付に対する不服申立てはこちらの記事で紹介しています。
【労災保険】不支給の決定。納得できないときは不服申立てる
【労災保険の不支給決定】情報開示請求で資料入手しよう

【編集後記】

夕べはTrekクロスバイクを綺麗にしました。
EVERS自転車丸洗いクリーナーでホコリを落としチェーンとスプロケットを掃除しました。
WAKOSチェーンルブ(CHAIN LUB)をチェーンにつけて完了。
自転車はエンジンもモーターもなく足でペダルを回すだけの単純な作りです。
それなのに50Kmでも100Kmでも好きなだけラクラク走れるなんてすごい乗り物だなと思っています。

昨日の1日1新 フライパンでぶりの照焼

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格