労働者1人ひとりの労働時間を客観的に把握する。会社の法律上の義務

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「お前が残業していたなんて会社は知らなかった」は認められません。

会社は労働者1人ひとりの労働時間を客観的に把握する法的義務があります。

労働時間を客観的に把握することは会社の法的義務

労働時間を把握することは法律で会社に義務付けられています。

厚生労働省は2018年基発1228第16号で労働時間を客観的な記録により労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならないと通達しています。

そして、労働安全衛生法で厚生労働省令で定める方法による労働時間の状況を把握することを会社に義務づけています。

労働安全衛生法66条の8の3

事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない

「次条第一項に規定する者を除く」とは労働基準法41条の2 1項1号の規定により労働する労働者(高度プロフェッショナル制度の適用者)を除くということです。

労働基準法41条の2 1項1号

高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)

事業者が労働時間の状況を把握する方法(原則)

客観的な記録により、

労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならない

タ イムカード
パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間
(ログインからログアウトまでの時間)の記録
事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等

事業者が労働時間の状況を把握する方法としては、原則として、タ イムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から労働 時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならない。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」2018年基発1228第16号 厚生労働省

労働者の自己申告制による労働時間の把握は、現実的には許されない

ノートパソコン・タブレット・スマホ・携帯電話のどれも持たずに業務をすることは考えられません。

「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」は現実的にどんな場面か思い浮かびますか?

自己申告制による労働時間の把握というのは、きわめて例外的な場合に限られると考えるべきでしょう。

労働時間の状況の把握する方法(例外)

「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」とは

「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、 事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること。
ただし、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、例えば、事業場外から社内システムにアクセスす ることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己 申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。
また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソ ナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、 認められない。

【労働時間の客観的把握義務】高プロを除くすべての労働者に適用

管理監督者だから、研究開発業務だから、会社は労働時間を把握しなくてよいのではありません。

「高プロ」(高度プロフェッショナル制度の適用)労働者以外は、すべての労働者の労働時間を客観的に把握する義務が会社にあります。

「労働時間の状況の把握」の対象

高度プロフェッショナル制度の適用者を除くすべての労働者
(1〜7の労働者も適用対象となる)

1 研究開発業務従事者
2 事業場外労働のみなし労働時間制の適用者
3 裁量労働制の適用者
4 管理監督者等
5 派遣労働者
6 短時間労働者
7 有期契約労働者

桜田門近く内堀通り沿いの並木(2020/11/11)

【編集後記】

この冬はじめてのコタツ。自宅の仕事机はコタツつきのテーブルなので専用のふとんをかけて電源をいれるとコタツになります。

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高さ調節ダイニングこたつ スクット 135x80cm 6点セット[■](こたつ+布団・しじら織り+回転椅子4脚)

これとは別の商品ですが、こういうタイプです。

ガスファンヒーターやエアコンの暖房が苦手なので、イスに座って入れるコタツつきテーブルはこれからの季節助かります。

イスに座らないときでも、高さがあるのでヨギボーのクッションに寄っかかったままでも入れます。

ふとんを外せば冬以外でもテーブル・大きな机になるので1年中つかえて便利です。

昨日の1日1新 不当解雇の労働事件の応援のための裁判傍聴 東京地裁

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  
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