【労働基準法】賃金は1分単位で計算して支払わなければ違法

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1日の労働時間で5分未満・15分未満など切り捨てて計算して賃金を支払うことは法律に違反しないのでしょうか?

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1日の労働時間で5分未満・15分未満など切り捨てて計算して賃金を支払うことは法律に違反しないのか?

大手外食産業(ファミリーレストランチェーン)で5分未満の労働時間を切り捨てて計算して賃金を支払っていた問題。

7月から1分単位で計算して賃金を支払うこと、過去2年分を1分単位で計算して支払うことが報道されています(2022/06/08)。

その大手外食産業は、「5分単位の勤怠管理自体が違法である認識はない」と報道機関に回答しているとのことです。

5分未満の労働時間を切り捨てて賃金を支払っても法律違反ではないのでしょうか?

労働時間は1分単位で計算して賃金を支払わなければ違法

労働時間は1分単位で計算して賃金を支払う義務があります。

5分単位、15分単位などで計算し、この単位に満たない分単位の時間を切り捨てて計算して賃金を支払うことは賃金の全額払の原則(労働基準法24条)違法です。

労働基準法24条(賃金の支払)本文(但し書き略)

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

毎日の労働時間は1分単位で正確に計上しなければ賃金の未払いとなり労働基準法違反であることを厚生労働省も説明しています。

労働時間の計算は1分単位(厚生労働省・大阪労働局)

Q 当社では、残業時間の計算を30分単位で行っており30分未満は切り捨てています。この取扱いでよろしいでしょうか。

A 割増賃金の計算に当たっては、事務簡便のため、その月における時間外の総労働時間数に30分未満の端数がある場合にはこれを切り捨て、それ以上の端数がある場合にはこれを1時間に切り上げることができるとされていますが、原則的には、毎日の時間外労働は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理といえます。

労働時間の端数計算を、四捨五入ではなく常に切り捨てで計算することは、切り捨てられた時間分の賃金が未払となるため認められていません

賃金は全額を支払わなければならないことが労働基準法24条にさだめられています。

毎日の労働時間を1分単位で正確に計上してその全額を支払わないことは労働基準法に違反しますから許されるものではありません。違法です。

1ヶ月の労働時間を合計するときだけ、30分未満を切り捨て30分以上を1時間に切り上げて計算することが認められている

労働時間は1分単位で正確に計上しなければいけないのが原則ですが、毎日の労働時間を集計して1ヶ月の労働時間を計算するときだけ、例外として端数処理をすることが認められています

1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合

  • 30分未満の端数を切り捨てること
  • 30分以上1時間に切り上げること

1分単位で労働時間を計算しなくてよい例外は、この場合です。

(1988年3月14日基発第150号)
「基発」とは厚生労働省(労働省)の労働基準局長名で発する通達のこと

会社が1日の労働時間を秒単位で計算して1ヶ月で集約するなら、それでもかまわないでしょう。

秒単位でなければ、分単位でおこなわずに1ヶ月で30「分」以上か未満かを判断してよい根拠はありません。

1日ごとの労働時間の計算を5分単位や15分単位で端数処理して良いという根拠は法令にも厚生労働省の通達にもありません。

根拠がない以上は、最低1分単位で計算しなければ、1ヶ月単位で集計したときに30「分」以上か未満の端数があるかどうかを判断することができません。

1ヶ月単位での労働時間を集計して「30分未満の端数」があるかどうかは、1日ごとの労働時間を1分単位で計算していなければ判断できないのです。

1日の労働時間で5分未満や15分未満などを切り捨てて計算して賃金を支払うことは違法です。

1日の労働時間が1分単位で計算されず、切り捨てて賃金が支払われているなら、未払賃金の支払いを請求する

1日の労働時間が1分単位で計算されずに切り捨てられて、その分の賃金が支払われていないなら違法です。未払賃金の支払いを請求しましょう。

請求するためには、日々の労働時間の記録をもとに支払われていない未払い賃金を明らかにします。

タイムカード、ICカードなどの客観的な方法で1人ひとりの労働者の労働日ごとに始業時刻と終業時刻を記録(出退勤記録)する義務が会社(など使用者)にあります。(労働基準法109条)

参照:労働時間の状況の把握 ( 改正安衛法第66条の8の3、改正安衛則第52条の7の3第1項、第2項 ) 厚生労働省

タイムカードをコピーする、ICカードで記録したデータを出力して、毎日の労働時間は証拠として記録を残しましょう。

もしも出退勤記録をしていない会社で働いているなら、手帳のカレンダーに出勤時刻・退勤時刻を記入しておくなど事実を客観的に記録しておきます。

出退勤の記録をはじめ社長とのやりとりはチャットで行われていたが、会社と賃金の支払いについてトラブルが起きてからチャットが削除されてしまい残っていないという相談者(労働者)の方もいました。

スクショなどでも記録は日々残しておきましょう。

そして、1日の労働時間が1分単位で計算されず切り捨てて賃金が支払われているなら、未払賃金の支払いを請求しましょう。

請求しても未払賃金が支給されないときの対処方法

1日の労働時間が1分単位で計算されず切り捨てて賃金が支払われているなら、未払賃金の支払いを請求します。

それでも会社が支払わないなら、別の方法で支払いを求めましょう。

具体的には、労働組合に加入し、未払賃金の支払いを要求・団体交渉をするのが1番のおすすめです。

労働組合に加入して未払い賃金の支払いを要求し会社と団体交渉する

大手外食産業(ファミリーレストランチェーン)で5分未満の労働時間を切り捨てて計算して賃金を支払っていた問題が報道されています。

すかいらーく、5分未満の切り捨て賃金支払いへ パートらに16億円
朝日新聞デジタル 2022年6月8日 14時31分

この大手外食産業は「5分単位の勤怠管理自体が違法である認識はない」と報道機関に回答しているにもかかわらず

  • 7月から1分単位で計算して賃金を支払う
  • 過去2年分を1分単位で計算して未払分の賃金を支払う

としたのは、労働組合が支払いを要求して会社と団体交渉を行なったからです。

この大手外食産業で働くクルー(労働者)が労働組合に加入し、要求して団体交渉をした結果、1分単位で労働時間を計算した未払いの賃金が支払われることになったのです。

【東部労組】すかいらーくは賃金を1分単位ですべての労働者に支払いなさい!

労働組合に加入し、要求して交渉すること、場合によってはストライキをおこなう。
労働組合による活動は憲法で保障された人権です。

労働者の要求を実現するために力強く取り組むことができますから、労働組合に加入することを検討しましょう。

弁護士に依頼して民事裁判・労働審判で解決をめざす

民事裁判で未払いの賃金の支払いを求めることができます。

裁判を自分で求めるのは現実的にはむずかしいでしょう。
弁護士に相談して依頼するのがよいでしょう。

労働審判は裁判にくらべて手続きもかんたんなので、労働者本人が1人で行なっていることもありますが、やはり提出する資料の準備など弁護士に依頼するほうが安心です。

民事裁判、労働審判、どちらの場合でも、日本労働弁護団の弁護士に依頼しましょう。
日本労働弁護団は労働者のために活動している弁護士の団体です。

日本労働弁護団

労働基準監督署で労働基準法違反の申告をして是正を求める。それでもダメなら労働局のあっせんで解決をめざす

たとえ全額でなく一部であっても、賃金の未払いは労働基準法違反です。

労働基準法に違反する事実があれば、労働者は労働基準監督官に申告することができます。

労働基準法違反の申告をしたことで、会社(使用者)は労働者に解雇やその他の不利益な取り扱いをすることが禁止されています。(労働基準法104条)

申告をうけた労働基準監督官は会社に聞き取りを行なうなど調査をおこないます。
調査の結果、賃金の未払いを確認すると、未払賃金を支払うように指導・是正勧告をおこない、悪質な場合は検察に送検します。

ですが、大きな違反ではないと判断されて指導したものの支払いの確認なく終えてしまうことがあります。

「指導したものの全く聞く耳を持たないので終える、ここから先は民事の問題だ」と言われたという相談者もいました。

労働基準法違反の申告は労働基準監督署で行いますが、是正されずに未払賃金が支払われない場合は、同じ厚生労働省ですが都道府県ごとにある労働局に「あっせん」を求めることができます。

労働局によるあっせんは紛争当事者の間に公平・中立な第三者として労働問題の専門家である「あっせん委員」が入り、双方の主張を聞き、問題点を整理しながら、労使双方で自主的解決が図られるよう調整を行い、紛争の解決を図る制度です。(厚生労働省)

労働局による「あっせん」を求めるには「あっせん申請書」を提出します。

あっせん申請書の記入そのものはむずかしいものではありませんので、労働者本人が行なうことができます。

あっせんを求める事項やその理由などを書くのが苦手、申請書とは別に労働法をふまえて専門的な書類を添付して提出したい、あっせん期日にあっせん委員とのやりとりや和解合意書の締結を自分で行なうのは不安。

こんな場合には特定社会保険労務士に手続きの代理を依頼することができます。

「労働者のための社労士・小倉健二」が取り組む業務は3つ(障害年金・労災保険給付・労働者の代理人として労働問題のあっせん解決)

【編集後記】

先週土曜日に出先でみつけた畑のカボチャ。

なぜか田んぼや畑を見るとうれしいです。
田んぼは都内ではむずかしいでしょうから体験農園でも探してみようかなと。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 ・30分無料zoomオンライン相談「相談・依頼の申込み」フォームから受付中。 1965年生まれ56歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  

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