【労働基準法15条】労働契約の締結時に書面で労働条件を明示する義務が会社にある

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卒業後に最初に就職した会社で入社時に書面で労働条件を明示された労働者の方が6割だったという調査結果が「連合」から発表されています。

入社時に書面での労働条件の明示をうけた労働者は6割(「連合」調査)

「入社前後のトラブルに関する調査2022」が連合(日本労働組合総連合会)から2022年4月28日に発表されました。

この調査結果に、書面による労働条件の明示をうけた労働者の実態が掲載されています。

卒業後に最初に就職した会社で、入社時に、賃金などの労働条件を明示されたか聞いたところ、「書面で渡された」労働者は約6割(59.9%)でした。

覚えていない労働者2割(19.6%)を除いても、約2割の労働者の方が書面による労働条件の明示をうけていないことになります。

書面による労働条件の明示は、2016年調査より6.1ポイント下降しているとの結果です。

従業員規模が50人以下では「書面で渡された」労働者は5割(49.4%)にすぎないことが調査結果からわかります。

卒業後に最初に就職した会社で、入社時に、
賃金などの労働条件を明示されたか?
回答者の
割合
書面で渡された 59.9%
社内イントラネットなどに掲示されているので自分で確認するように指示された 6.0%
見せられただけで渡されず回収された 3.4%
口頭で説明された 5.4%
書面の明示がないだけでなく、なにも説明はなかった 2.8%
覚えていない 19.6%
その他 2.9

入社前後のトラブルに関する調査2022 連合Press Release

労働条件の明示は法律上の義務(労働基準法5条)

労働基準法第15条第1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

以下の6項目についての労働条件の明示は、書面を交付することで行なうことが必要です。

労働者が希望する場合には、書面の代わりにファクシミリ送信、電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法での明示もできますが、出力して書面を作成できるものに限られています。

  1. 契約期間に関すること
  2. 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
  3. 就業場所、従事する業務に関すること
  4. 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
  5. 賃金の決定方法、支払時期などに関すること
  6. 退職に関すること(解雇の事由を含む)

労働契約をむすぶときに書面による労働条件の明示がなかった場合は、厚生労働省のひな形を渡して交付を求めましょう。

労働条件通知書

労働条件通知書 裏面

労働条件通知書 厚生労働省

労働基準法15条(労働条件の明示)

(1項)使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

2項 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

3項 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

労働基準法施行規則5条

(1項)使用者が法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。

ただし、第1号の2に掲げる事項については期間の定めのある労働契約であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第4号の2から第11号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。

1号 労働契約の期間に関する事項

1号の2 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

1号の3 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

2号 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

3号 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

4号 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

4号の2 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

5号 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

6号 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

7号 安全及び衛生に関する事項

8号 職業訓練に関する事項

9号 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

10号 表彰及び制裁に関する事項

11号 休職に関する事項

2項 使用者は、法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない。

3項 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める事項は、第1項第1号から第4号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。

4項 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる

1号 ファクシミリを利用してする送信の方法

2号 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)

書面等による労働条件の明示しなかったために、書類送検した事例

労働契約の締結時に書面(労働者が希望した場合は、記録を出力することで書面を作成できる電子メールなども含む)で労働条件の明示をしないことは、労働基準法15条違反です。

労働基準法15条に違反して書面による労働条件の明示をしないことは、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる犯罪です。

「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(2021年4月1日〜2022年3月31日公表分)を2022年4月28日に厚生労働省が掲載しています。

この公表事案のなかにも、労働契約を結ぶ際に、労働条件について書面を交付すること等の方法で明示しなかったことで検察へ書類送検した事案が掲載されています。

(厚生労働省のホームページでは企業・事業場名称が掲載されていますが、この記事では削除してあります。)

所在地 公表日 違反法条 事案概要 その他参考事項
北海道札幌市中央区 R4.2.22 労働基準法第15条 労働者2名に対し、労働条件について、書面を交付する等により明示しなかったもの R4.2.22送検
神奈川県横浜市神 奈川区 R4.3.17 労働基準法第15条 労働契約を結ぶ際に、労働条件について書面を交付すること等の方法で明示しなかっ たもの R4.3.17送検
兵庫県神戸市中央 区 R4.3.25 労働基準法第15条 労働契約を締結した労働者に対して、賃金、労働時間等の労働条件を書面等の方法で明示しなかったもの R4.3.25送検

【編集後記】

『差別はたいてい悪意のない人がする 見えない排除に気づくための10章』(キム・ジヘ著)を読んでいます。

奴隷とは、人間としての権利を与えられないまま労働力だけを必要とされる状態を意味する。
「枠の中」に存在していても、その土地の「主人」とは平等でない人、政治的権利を剥奪され権利を要求することもできない人、
「主人」が必要とする労働力を提供し終えたら、痕跡も残さず消滅しなければならない人。
こうした人々は、現代社会において何と呼ばれるかとは無関係に 「奴隷」といえる。
このような「現代の奴隷」は、私たちのまわりにどんな姿で存在しているのか。奴隷とは、とっくに消えた昔のことだと考えてもよいのだろうか。

P159

「奴隷」という言葉には否定的な感情を持つ私たちですが、外国人労働者について「私たち」とはちがう別のグループの人とわけることで現代日本社会の奴隷制度をつくってしまっているのだと考えさせられます。

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差別はたいてい悪意のない人がする 見えない排除に気づくための10章』(キム・ジヘ著)

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 ・30分無料zoomオンライン相談「相談・依頼の申込み」フォームから受付中。 1965年生まれ56歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  

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