老齢基礎年金繰上げ受給は慎重に【障害年金】受給できなくなる場合

固定ページ
Pocket

65歳から受給できる老齢基礎年金は繰上げて受給することができます。
繰上げ受給には問題点もあります。
毎月分の年金額が低くなってしまいますし、障害年金を受け取れなくなってしまいます。
老齢基礎年金の繰上げ受給者でも障害基礎年金を受け取れる場合もありますが、老齢年金の繰上げ受給には注意が必要です。

障害基礎年金【初診日】要件

老齢年金を繰上げ受給すると、すべての場合で障害基礎年金を受給できなくなるわけではありません。

障害年金の受給要件のうち初診日要件には、20歳前を除くと、以下の(1)(2)の2種類があります。

(1)被保険者
(2)かつて被保険者であった60歳以上65歳未満の国内居住者

老齢年金を繰上げ受給すると、65歳に達したとみなされますので(2)の要件は満たしませんが、(1)に該当する場合は初診日要件を満たすことになります。

老齢年金を繰上げ受給者であっても、

60歳前に初診日がある病気やケガによる障害であれば、
保険料納付要件を満たし、
障害認定日において障害等級1級2級に該当していれば、
障害基礎年金を受け取ることができます。

初診日要件

国民年金法30条(支給要件)

(1項)å障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する

ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。

1号 被保険者であること

2号 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること

2項 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。

【老齢年金を繰上げ受給権者】は65歳に達したとみなされる

老齢年金は65歳から受給しますので、65歳から受給できる老齢年金を繰上げ受給すると、65歳に達したとみなされます。

65歳に達する(65歳誕生日の2日前)までに請求できると決められていることについては、老齢年金を繰上げ受給すると請求できなくなります。

老齢年金を繰上げ受給することによる影響

老齢年金の繰上げ受給は、年金の毎月分の金額そのものがが低くなってしまいます。

これは65歳以降も一生低い年金額を受け取ることになります。

そして、受け取れる年金の金額以外にも、

老齢年金を繰上げ受給すると、寡婦年金を受け取れなくなりますし、任意加入被保険者となることができなくなります。

障害基礎年金についても、65歳誕生日の2日前までは請求できるとされているものについては請求できなくなってしまいます。

障害認定日には障害等級に該当する程度の状態になかった方が、あとで障害が重くなって請求できる事後重症請求。

別の障害が合わさってはじめて2級の程度の障害の状態になって請求できる基準障害・はじめて2級による障害年金請求。

障害基礎年金を受け取っている方が、あとから別の障害によって障害の程度がさらに重くなった場合に年金額を増額請求できる額改定請求。

障害基礎年金を受け取っている方が、障害の程度が軽くなって年金が支給停止されていた方が、別の障害によって年金の支給停止を解除する請求。

老齢年金の繰上げ受給をしてしまうと、障害年金についてのこれらの請求ができなくなってしまいますから注意が必要です。

老齢年金を繰上げ受給権者となると以下の規定が適用されなくなる
初診日に、(かつて国民年金被保険者であった)日本国内居住の60歳以上65歳未満の方に支給される障害基礎年金 国民年金法30条1項(支給要件)
事後重症による障害基礎年金 国民年金法30条の2(1項)
基準障害・はじめて2級による障害基礎年金 国民年金法30条の3(1項)
20歳前初診日による事後重症による障害基礎年金 国民年金法30条の4(2項)
その他障害との併合による障害基礎年金の額改定 国民年金法34条4項
その他障害による支給停止の解除 国民年金法36条2項
寡婦年金 国民年金法49条1項
任意加入被保険者 国民年金法附則5条1項

根拠条文

国民年金法附則9条の2の3(障害基礎年金等の特例)

第30条第1項第2号に限る。)、第30条の2第30条の3第30条の4第2項第34条第4項第36条第2項ただし書及び第49条並びに附則第5条の規定は、当分の間、附則第9条の2第3項若しくは前条第3項の規定による老齢基礎年金の受給権者又は厚生年金保険法附則第7条の3第3項若しくは第13条の4第3項の規定による老齢厚生年金の受給権者については、適用しない

国民年金法30条1項(支給要件)

障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。

1号 被保険者であること。
2号 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること。

国民年金法30条の2(1項)(事後重症)

疾病にかかり、又は負傷し、かつ、当該傷病に係る初診日において前条第1項各号のいずれかに該当した者であつて、障害認定日において同条第2項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第1項の障害基礎年金の支給を請求することができる。

国民年金法30条の3(1項)(基準障害・はじめて2級)

疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(以下この条において「基準傷病」という。)に係る初診日において第30条第1項各号のいずれかに該当した者であつて、基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準傷病による障害(以下この条において「基準障害」という。)と他の障害とを併合して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたとき(基準傷病の初診日が、基準傷病以外の傷病(基準傷病以外の傷病が2以上ある場合は、基準傷病以外のすべての傷病)の初診日以降であるときに限る。)は、その者に基準障害と他の障害とを併合した障害の程度による障害基礎年金を支給する。

国民年金法30条の4(2項)(20歳前初診日による事後重症)

疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であつた者(同日において被保険者でなかつた者に限る。)が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日後において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日後において、その傷病により、65歳に達する日の前日までの間に、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に前項の障害基礎年金の支給を請求することができる。

国民年金法34条4項(その他障害との併合による障害基礎年金の額改定)

障害基礎年金の受給権者であつて、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(当該障害基礎年金の支給事由となつた障害に係る傷病の初診日後に初診日があるものに限る。以下この項及び第36条第2項ただし書において同じ。)に係る当該初診日において第30条第1項各号のいずれかに該当したものが、当該傷病により障害(障害等級に該当しない程度のものに限る。以下この項及び第36条第2項ただし書において「その他障害」という。)の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とその他障害(その他障害が2以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が当該障害基礎年金の支給事由となつた障害の程度より増進したときは、その者は、厚生労働大臣に対し、その期間内に当該障害基礎年金の額の改定を請求することができる。

国民年金法36条2項(その他障害による支給停止の解除)

障害基礎年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつたときは、その障害の状態に該当しない間、その支給を停止する。

ただし、その支給を停止された障害基礎年金の受給権者が疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において第30条第1項各号のいずれかに該当した場合であつて、当該傷病によりその他障害の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とその他障害(その他障害が2以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が障害等級に該当するに至つたときは、この限りでない。

国民年金法49条1項(寡婦年金)

寡婦年金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である夫(保険料納付済期間又は第90条の3第1項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係る期間以外の保険料免除期間を有する者に限る。)が死亡した場合において、夫の死亡の当時夫によつて生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)が10年以上継続した65歳未満の妻があるときに、その者に支給する。ただし、その夫が障害基礎年金の受給権者であつたことがあるとき、又は老齢基礎年金の支給を受けていたときは、この限りでない。

国民年金法附則5条1項(任意加入被保険者)

(任意加入被保険者)
次の各号のいずれかに該当する者(第二号被保険者及び第三号被保険者を除く。)は、第7条第1項の規定にかかわらず、厚生労働大臣に申し出て、被保険者となることができる。

1号 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であつて、厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができるもの

2号 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者

3号 日本国籍を有する者その他政令で定める者であつて、日本国内に住所を有しない20歳以上65歳未満のもの

厚生年金保険法附則7条の3(3項本文)(老齢厚生年金の支給の繰上げ)

当分の間、次の各号に掲げる者であつて、被保険者期間を有し、かつ、60歳以上65歳未満であるもの(国民年金法附則第5条第1項の規定による国民年金の被保険者でないものに限る。)は、政令で定めるところにより、65歳に達する前に、実施機関に当該各号に掲げる者の区分に応じ当該者の被保険者の種別に係る被保険者期間に基づく老齢厚生年金の支給繰上げの請求をすることができる。ただし、その者が、その請求があつた日の前日において、第42条第2号に該当しないときは、この限りでない。

厚生年金保険法附則13条の4

(1項)附則第8条の2各項に規定する者であつて、附則第8条各号のいずれにも該当するもの(国民年金法附則第5条第1項の規定による国民年金の被保険者でないものに限る。)は、それぞれ附則第8条の2各項の表の下欄に掲げる年齢に達する前に、実施機関に老齢厚生年金の支給繰上げの請求をすることができる。

(3項)第1項の請求があつたときは、第42条の規定にかかわらず、その請求があつた日の属する月から、その者に老齢厚生年金を支給する。

小さい花

【編集後記】

少しでも早く老齢年金を受け取りたいと繰上げ受給を考えている方もいらっしゃると思います。
繰上げ受給して低い年金額で受け取っていても、65歳からは低くなる前の年金額を受け取れると思っている方もいらっしゃいます。繰上げ受給による年金額の下がる割合は生涯続きます。
また、年金額だけでなく、障害年金を請求できなくなる場合が多いことなども理解した上で判断していただければと思います。

昨日の1日1新 KingBox

The following two tabs change content below.

小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。