労働災害(通勤・業務)には健康保険を使ってはいけない

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仕事や通勤でケガをしたときに、「労災保険でも健康保険でも、どちらを使うか選択するのは本人の自由なんでしょ?」ときかれることがありますが、そうではありません。

通勤災害・業務災害。労働災害による病気やケガで健康保険を使うことは許されません。

労災で健康保険を使うことは法律違反です。

労災で病院にかかるときには、労災保険を使わなければならないことになっています。

業務災害で健康保険は使えないことになっている(健康保険法1条)

健康保険は、業務災害以外の病気やケガに関して保険給付をすると健康保険法1条に明確にさだめられています。

業務災害(仕事でのケガなど)で健康保険証をつかって診療をうけたり薬を受けとってはいけないのです。

健康保険法1条(目的)

この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害(労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第7条第1項第1号に規定する業務災害をいう。)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

通勤災害で健康保険は使えないことになっている(健康保険法55条)

健康保険法55条で労災保険から給付が受けられる場合には、健康保険からの給付を行わないこととされています。

通勤災害のよる病気やケガの診療や薬は労災保険から給付が行われることが労災保険法にさだめられています。

通勤災害は労災保険から給付が行われるので健康保険から給付は行わないことになっています。

通勤災害で健康保険証を使ってはいけないことになっているのです。

健康保険法55条(他の法令による保険給付との調整)

被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、埋葬料、家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費若しくは家族埋葬料の支給は、同一の疾病、負傷又は死亡について、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)又は地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)若しくは同法に基づく条例の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない

労働災害(業務災害・通勤災害)は労災保険を使う(労災保険法2条の2)

業務災害、通勤災害、どちらの場合であっても労働災害(労災)のよる病気やケガには健康保険は給付をしない・健康保険を使えないことが健康保険法に明記されています。

労働災害には健康保険を使えない、労働災害によるケガや病気で健康保険証を使ってはいけないことが法律で定められています。

その代わりに、業務災害、通勤災害、どちらの場合であっても労働災害による病気やケガには、労災保険から給付が行われることになっています。

しかも、健康保険のように一部負担金(70歳未満は3割負担・健康保険法74条)を払う必要がありません。

全額労災保険が負担し、ゼロ円で診療を受けて薬を受けとることができます。

労働者災害補償保険法2条の2

労働者災害補償保険は、第1条の目的を達成するため、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。

会社から頼まれても労災で健康保険をつかってはいけない

  • 労災事故がおきたことで保険料が値上がりするのがイヤだ(労災保険の保険料は会社が全額払います)
  • 労災事故がおきたことで労働基準監督署から指導をうけたくない
  • 安全管理責任者が社内で責任をとわれると困る

これらの理由などから、労災(業務災害)をかくして私傷病の扱いにしてほしいと会社から言われることがあります。

この記事で見てきましたように、労働災害による病気やケガで健康保険をつかうことは違法です。

会社から言われても健康保険証をだして診療をうけることはやめましょう。

「労災で健康保険をつかうのは違法なのでできません」と言って、労災申請(労災保険給付の請求)をしましょう。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  
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