【傷病休職期間満了】休職前の仕事でなければ復職認めないと言われて困っている

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業務上災害ではない病気やケガ(私傷病)で休職中。
主治医から休職前よりも軽い仕事なら復職して働けるとの診断がでた。
会社からは休職前の仕事でなければ復職させないと言われ困っている・・・。
私傷病による休職中の労働者の復職について考えてみましょう。

ケガ

職種・業務内容が【限定されていない】労働契約の場合

職種や業務内容が限定(特定)されていない労働契約であれば、休職中の労働者が復職を申し出たら休職前の業務で働けない場合でも他の業務・職種での配置を検討しなければならない。

以下の2つを満たす場合、復職を認めず休職を継続させるときは、

会社は労働者に働いた場合の給料全額を払わなければなりません

  • 休職前の業務では働けなくても他の業務でなら働ける状態であり、現実に配置可能な業務がある
  • 休職中の労働者が働くことを申し出ている

労働者の復職を拒否した会社は、休職中でも働いた場合と同じ給料を支払わなければなりません。

働く(労働に従事する)義務(債務)を果たす(履行する・弁済する)と

会社に伝えて(通知して)いるのに、

会社が働くことを拒否しているために(受領を拒み)

働けない(債務を履行できない)場合は、

会社は給料全額を払わなければならない(反対給付の履行を拒むことができない)からです。

民法623条(雇用)

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

民法493条(弁済の提供の方法)

弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

民法492条(弁済の提供の効果)

債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる

民法536条2項

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

債務とは、債務者が債権者に対して一定の行為をすることを内容とする義務のこと。

債務の本旨とは、債務本来の趣旨・目的のこと。

弁済の提供とは、債務者が弁済をするために債権者の受領を求めること。

片山組事件

就職して21年以上にわたり工事現場の監督をしていた労働者が病気で現場監督の仕事ができなくなりました。

現場監督以外の事務の仕事なら働けたのですが、会社は現場監督以外の仕事で働くことを認めずに病気による休職命令をだしました。

そして休職期間中の給料を会社は払いませんでした。

最高裁判所は、休職前に働いていた職務・業務内容でなければ復職を認めないという理由で給料が払わないことになるのは不合理だと判断しました。

労働者が疾病のためその命じられた義務のうち一部の労務の提供ができなくなったことから直ちに債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと断定することはできないとされた事例

建設会社に雇用されて以来21年以上にわたり建築工事現場における現場監督業務に従事してきた労働者が、疾病のため右業務のうち現場作業に係る労務の提供ができなくなった場合であっても、労働契約上その職種や業務内容が右業務に限定されていたとはいえず、事務作業に係る労務の提供は可能であり、かつ、その提供を申し出ていたときには、同人の能力、経験、地位、右会社の規模、業種、右会社における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして同人が配置される現実的可能性があると認められる業務が他にあったかどうかを検討した上でなければ、同人が債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと断定することはできない。

職種・業務内容が限定されていないのに、たまたま休職前に働かされていた職務・業務内容でなければ復職を認めない、復職が認められなければ休職中だから給料は払わないというのは不合理だと判断されています。

そのように解さないと、同一の企業における同様の労働契約を締結した労働者の提供し得る労務の範囲に同様の身体的原因による制約が生じた場合に、その能力、経験、地位等にかかわりなく、現に就業を命じられている業務によって、労務の提供が債務の本旨に従ったものになるか否か、また、その結果、賃金請求権を取得するか否かが左右されることになり、不合理である。

事件番号 平成7(オ)1230 裁判年月日 平成10年4月9日 最高裁判所第一小法廷 裁判所(COURTS IN JAPAN)

職種・業務内容が【限定されている】労働者の場合

職種が限定(特定)された労働契約では、限定された職種において通常の程度の業務を遂行できない場合は、会社が復職を拒否して給料を払わないのは認められるでしょう。

○○の仕事をする契約をしているのに○○の仕事ができないのであれば、△△の仕事ならできると言っても債務の本旨に従った弁済の提供があったことにはなりませんので、反対給付(給料の支払い)を債権者(会社)は拒否できます。

民法536条1項

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

しかし、限定された職種・業務内容以外での復職が認められない場合であっても、完全復帰でなければ復職が認められないとなれば問題です。

限定された職種・業務の内容で、軽減業務なら復帰可能である状況になり、本人からも復職の申し出がある場合には、債務の本旨にしたがった履行の提供があったとものと認められます。

休職中の労働者が復職を申し出ていて、軽作業での復帰可能になった時点から会社は給料を払う義務があります。

参考 カントラ事件 公益社団法人全国労働基準関係団体連合会

【復職をめぐる会社とのトラブル】公的機関による「あっせん」で解決をめざす方法がある

休職前の業務でも、休職前よりも軽減された業務であっても、休職した労働者が病気やケガが回復して、働ける状態にあることが復職の条件になります。

休職していた労働者は働くことを希望して主治医から復職可能の診断書をもって会社に主張します。

会社側は主治医の診断ではなく、産業医や会社の指定医による診断によって復職を拒むことがあります。

働けるほどに病気やケガが回復していないと会社が主張して、休職の継続命令あるいは休職期間満了にともなう就業規則の定めによる自動退職・解雇が行われる場合です。

休職の継続や自動退職・解雇を主張する会社が復職を認めず労働者が困ってしまった場合にはどうしたらいいでしょうか?

そんな場合には、労働委員会や労働局などの公的機関が会社と労働者の間に入って話し合いをすすめる「あっせん」によって解決を求める方法があります。

【労働委員会あっせん事例】病気休職からの復職をめぐるトラブル

私傷病を原因とした解雇に納得がいかないとして、解決金の支払いを求めた事例
紛争の内容
自動車整備工場に勤務していた労働者Xは、休日に自宅で足を骨折する怪我(私傷病)を負い、会社に治療のため休職を願い出て認められました。

会社が定めた休職期間が経過しても、Xの怪我は完治せず、会社はXが現在の怪我の状態では従前の業務に復帰することが困難と判断し、Xに解雇を通知し解雇予告手当を支払いました。

Xは、怪我は治りつつあり業務が可能と主張し、解雇は納得がいかないとして、会社に解決金の支払いを求め、あっせん申請をしました。

あっせんでは
Xが復帰を求めず、会社も早期の解決を望んだため、あっせん員が金銭面での条件をすり合わせ、会社がXに解決金を支払うことで双方が合意し、解決しました。
ポイント
私傷病による休職ができるかは、就業規則の規定の有無や個別の合意によるとされています。

休職期間が満了しても労働者の怪我や病気が完治せず、職務に従事しながら2,3か月程度様子を見ることによって完全に復職することが可能であった場合には、解雇は無効とされた事例があります。

メンタルヘルス不調による傷病休職後の復職の可否の事例
労働側(X)主張
体調は改善し、通常勤務できる状態であるのに、休職扱いを続けられ、不当に退職強要されたことから、退職理由を会社都合とし、会社都合の退職金、経済的・精神的 損害に対する補償金及び慰謝料の支払いを求める。
使用者側(Y社)主張
通常勤務の可否について、復職支援プログラ ムの実施により一定期間確認し、また、休職期 間満了日に産業医からの意見を受けた結果、通常勤務に就くことは困難であると判断し、就業規則に則り休職期間満了による退職となった。
あっせんの経過と結論

事情聴取後あっせん員は協議し、主治医と産業医の診断結果が異なっていることなどから、 会社都合による退職とすることができないかY社に打診した。

Y社は、Xの主張を認めて会社都合とすることは受け入れられないが、金銭解決には応じるとの意向を示したため、金銭解決 で調整することとした。

当初、双方の主張する金額には大きな開きがあったが、労働者側及び使用者側あっせん員が それぞれの控室に赴き、粘り強く説得したところ、Xが合意案について1週間程度検討させて ほしいと希望したことから、Y社の了解を得てあっせんを中断した。

その後、Xから金銭解決で合意したい旨連絡が入ったため、2回目のあっせんを開催し、あ っせん員があっせん案を提示したところ、双方がこれを受諾して本件は終結した。

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      小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

      小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 ・30分無料zoomオンライン相談(期間限定)「相談・依頼の申込み」フォームから受付中。 1965年生まれ55歳。連れ合い(妻)と子ども2人。 労働者の立場で労働問題に関わって30年。 2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格
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