「令和元年業務上疾病発生状況(業種別・疾病別)」が厚生労働省から公表されています。
休業4日以上の集計で合計8,310件。全体の6割を超える5,132件が腰痛(災害性腰痛)です。
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2019年業務上疾病の6割超が災害性腰痛
業務上疾病のなかで負傷に起因する疾病の割合72%
業務上疾病 | 8,310件 |
---|---|
負傷に起因する疾病 | 6,015件(72%) |
負傷に起因しない疾病 | 2,295件(28%) |
負傷に起因する疾病のなかで災害性腰痛が占める割合85%
負傷に起因する疾病 | 6,015件 |
---|---|
腰痛(災害性腰痛) | 5,132件(85%) |
それ以外 | 883件(15%) |
【腰痛】災害性(負傷による)腰痛と非災害性(負傷によらない)腰痛
災害性腰痛は5,132件と業務上疾病による労働災害の6割を超えていますが、非災害性腰痛は33件しか労働災害と認められていません。
災害製腰痛と非災害性腰痛とはなにか?厚生労働省「腰痛の労災認定」をみてみましょう。
災害性の腰痛(負傷による腰痛)
災害性の原因による腰痛とは、負傷(ケガ)による腰痛で2つの要件をどちらも満たしているものをいいます。
- 腰の負傷又はその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること。
- 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること。
<例>重量物の運搬作業中に転倒した場合や、重量物を2人で担いで運搬する最中にそのうちの1人滑って肩から荷をはずした場合のように、突然の出来事により急激な強い力が腰にかかったことにより生じた腰痛
<例>持ち上げる重量物が予想に反して、重かったり、逆に軽かったりする場合や、不適当な姿勢で重量物を持ち上げた場合のように、突発的で急激な強い力が腰に異常に作用したことにより生じた腰痛
非災害性の腰痛(負傷によらない腰痛)
災害性の原因によらない腰痛とは、突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担がかかる仕事に従事している労働者が発症した腰痛です。
作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で腰痛が発症したと認められるものをいいます。
発症原因により、次の(1)と(2)に区分して判断されます。
(1) 筋肉等の疲労を原因とした腰痛
次のような業務に比較的短期間(約3カ月以上)従事したことによる筋肉等の疲労を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。
- 約20kg以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務<例>港湾荷役など
- 毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務<例>配電工(柱上作業)など
- 長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務<例>長距離トラックの運転業務など
- 腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務<例>車両系建設用機械の運転業務など
(2)骨の変化を原因とした腰痛
次のような重量物を取り扱う業務に相当長期間(約10年以上)にわたり継続して従事したことによる骨の変化を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。
- 約30kg以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務
- 約20kg以上の重量物を、労働時間の半分程度以上に及んで取り扱う業務
なお、腰痛は、加齢による骨の変化によって発症することが多いため、骨の変化を原因とした腰痛が労災補償の対象と認められるには、その変化が「通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える場合」に限らるとされています。
また、上記(1)に示す業務に約10年以上従事した後に骨の変化を原因とする腰痛が生じた場合も労災補償の対象となります。
【編集後記】
仕事中にぎっくり腰になったとしても仕事が原因で発症したのか、たまたま仕事中に発症しただけなのかによって労災かどうか判断されます。
災害性の腰痛にくらべて非災害性の腰痛が労災として認められている件数が極端に少ないことがわかります。
仕事によって腰痛になったと実感している方は少なくないでしょう。
仕事(業務)が原因となって腰痛が発症したことを主張する根拠をしっかりと準備して労災申請(労災保険の給付請求)をしていただきたいと思います。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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