【退職届を書かない】解雇だと言われたのに退職届を求められた

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解雇すると言われたときに、会社に求められても退職届を出してはいけません。

退職届

退職届を出すように会社が求めるのは、解雇ではなく辞職させようとしているから

退職届は会社の意思に関わらず労働者が一方的に会社を退職するときに提出するものです。
形式的には退職願なら、退職したいと申し出て会社が承認することで退職になります。

労働者の意思に関係なくたとえ働き続けたいと言っても、会社が一方的に労働者を退職させてしまうのが解雇です。

会社が解雇するのに労働者に退職届や退職願をださせることは矛盾しています。

では、なぜ会社が労働者を解雇するのに退職届を求めるのでしょうか?

ひとことで言ってしまうと「解雇はできない」からです。

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

一言で言うと「解雇はできない」

解雇できないから、会社をやめさせたい労働者に退職届をださせて自ら退職するように仕向けているのです。

ですから、もしも会社が解雇すると言ってきたときに退職届を求めてきたら、拒否します。

解雇だと言われたら、会社に求められても退職届を出してはいけません。

【労働契約の終了】解雇は会社からの一方的な意思表示で終了。退職届は労働者からの一方的な意思表示で終了

労働契約も「契約」の1つです。

契約は成立も変更も終了(消滅)も契約当事者の意思表示によるのが、一般法としての民法の原則です。

もちろん労働契約は特別法である労働法各法によって、使用者の意思表示による解雇は制限され、労働者の意思表示による辞職は保護されています。

労働契約終了の3パターン

労働契約の終了 意思表示
1 合意退職 使用者か労働者のどちらかが相手に対して労働契約の終了を申し入れて、相手方が合意することで労働契約を終了する。
2 解雇 使用者(会社)からの一方的な意思表示で労働契約が終了
3 辞職 労働者からの一方的な意思表示で労働契約が終了

たとえば「コロナ禍の影響で経営状況が悪いので辞めてもらいたい」と会社で言われた場合、その意味は2通り考えられます。

  1. 労働契約終了の申込み(または申込みの誘引)
  2. 解雇通知

1(労働契約終了の申込み)であれば、会社からの労働契約終了の申込みに対してあなたが退職届を出すことで労働契約が終了します。

あるいは、会社からあなたへ労働契約の終了の申込みの誘引だったとすると、あなたが退職願いを出して労働契約終了の申込みをして、会社が承諾することで労働契約が終了します。

いずれにしても、労働契約も契約の1つですので、当事者の一方が申込み、相手方が承諾することで契約が成立します。

労働契約を終了する契約も申込みと承諾の意思表示が合致すると成立します。

契約は合意によって成立(変動・消滅)します。

2(解雇通知)であれば、あなたが同意するかどうかは問題となりません。

会社があなたに解雇通告することだけで労働契約が終了します。

しかし、客観的な合理性と社会的相当性の両方を満たさない限り、解雇は無効です。

解雇が無効であれば労働契約は継続していますから、解雇通知後も労働者は会社から給料を受け取る権利があります。

労働契約法16条(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

たとえばコロナ禍など経営状況を理由とする解雇は整理解雇ですが、整理解雇は4要件を満たさないと無効になります。

整理解雇の4要件 4つの要件をすべて満たさない整理解雇(リストラ)は解雇権濫用として無効です。
1 整理解雇の必要性 企業の維持・存続を図るために、整理解雇が必要かつ最も有効な方法であること。
2 解雇回避の努力 新規採用の中止、希望退職者の募集、一時帰休の実施、 関連企業への出向など企業が解雇回避のために努力したこと。
3 整理基準と人選の合理性 整理解雇の対象を決める基準が合理的かつ公平で、その運用も合理的であること。
4 手続の妥当性 解雇の必要性や規模・方法・整理基準などについて十分説明をし、労働者に納得してもらう努力をしたこと。

詳しくはこちらの記事で紹介しました。

コロナウィルス【リストラ】が不安な方。整理解雇は簡単に許されないことを知りましょう

解雇すると言われて退職届は出してはいけない

解雇すると言われて、会社から退職届を求められた。

退職届を出すと損をする可能性が大きいです。退職届を出してはいけません。

解雇は会社が一方的にするものですから、労働者の退職届は必要ありません。

退職届を出させるのは、解雇ができないからです。

退職届を出すと、会社は自分の意思で退職したのだと主張する

退職届を会社が求めるのは、解雇ではなく辞職(自己都合退職)したのだと会社が主張したいからです。

労働契約終了の3パターンを見ましたが、解雇であればあなたに退職届を求めること自体ありえません。

したがって、解雇なのに退職届を出すように会社に言われた場合には、退職届を出す必要はありません。

実際の場面での対応としては、解雇だと言われたら退職届を出してはいけないのです。

  • 「社会の手続きの規定で解雇でも辞職でも、会社をやめるときには退職届を出すことになっている。」
  • 「退職届をださないと退職金を支払えない決まりになっている」

などいろんなことを言ってくる会社がありますが、それは嘘です。

仮に規定があったとしても意味がないことですから、退職届を出してはいけません。

解雇ではなく、辞職させたいから退職届を書かせようとしているのです。

客観的な合理性と社会的相当性の両方を満たさない限り、解雇は無効です。

コロナ禍など経営状況を理由とする解雇は整理解雇ですが、整理解雇は4要件を満たさないと無効になります。

単純にコロナ禍で経営が厳しいからという理由では解雇できません。

Q.解雇するから退職届を出せと言われたらどうしましょう?

  • 退職届を出すのは解雇ではない。
  • 辞職するつもりはないから退職届・退職願はださない。
  • 解雇するというなら解雇理由証明書を交付せよ。

と伝えましょう。

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

“君辞めてくれ!”と言われたら。解雇の理由を書面で下さい、と言いましょう。

解雇なのに退職届を出すと、失業手当で損をする

解雇・会社都合退職なら待機期間7日間だけで、すぐに失業手当(雇用保険の基本手当)受け取り始められます。

しかし、自己都合退職となると、待機期間7日間に加えてさらに2ヶ月※待たないと失業手当受けとれません。

(※離職日が2020年10月1日以降の給付制限の期間は3ヶ月から2ヶ月へと短縮されています。)

それだけではありません。自己都合退職だと失業手当を受けとれる日数自体が少なくなってしまいます。

結果として受けとれる失業手当の総額そのものも減ってしまいます。

詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

解雇だと言われたら、解雇通告を書面で受け取ろう!

解雇なのに退職届を出してはいけません。

解雇予告手当が受けとれなくなる

ひとことで言えば「解雇はできません」。

仮に、解雇が認められる(有効な)ケースだった場合でも、解雇の30日以上前に通知するか、30日分の賃金相当の手当を支払うことが必要です。

この際に受け取れる手当を解雇予告手当といいます。

解雇予告と解雇の有効性(解雇が有効か無効か)は別です。

適法に解雇予告がされたからといって、解雇が有効になるわけではありません。

適法な解雇予告がなかったからといって、解雇が無効になるのでもありません。

しかし、解雇が有効な場合であっても、30日以上前に解雇予告がされていなかった場合には、解雇予告手当を支払わないと労働基準法20条に違反します。

有効な解雇であっても、30日以上前の解雇予告か解雇予告手当の支払いを求めることができます。

労働基準法20条(解雇の予告)

(1項)使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30前にその予告をしなければならない。
30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

2項 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

3項 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

詳しくはこちらの記事で紹介しました。

有効な解雇の場合でも【解雇予告】無ければ解雇予告手当を請求できる

本当は解雇なのに会社から求められたからといって退職届を出してしまうと、解雇ではなく辞職したのだと会社から言われることになり、解雇予告手当が支払われなくなってしまう可能性もあります。

会社から解雇だと言われたら、会社に求められても退職届を出してはいけません。

【編集後記】

事務所に荷物が届いたので、昨日(2021/02/02)新宿まで自転車で荷物を取りに行きました。

よく晴れていて春のように暖かくて、途中でジャンパーもセーターも脱いでワイシャツで走りました。

今日は立春。1番寒い日はこれからでしょうが、暦の上ではもう春です(^o^)。

昨日の1日1新 深大寺の福まめ

深大寺の福まめ

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格