客観的合理性と社会通念上の相当性がない解雇は無効です。
しかし、客観的合理性と社会通念上の相当性がある解雇であっても、30日前の解雇予告が必要です。
解雇予告がない解雇には、平均賃金30日分以上の解雇予告手当を請求できます。
【解雇予告ない解雇】平均賃金30日以上の解雇予告手当を請求できる
解雇予告なく解雇された場合は、平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いを請求できます。
解雇予告または解雇予告手当を払わない解雇をした会社は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑罰を受ける
解雇予告または解雇予告手当を払わない解雇は労働基準法20条違反の犯罪です。
6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑罰を受ける会社の犯罪です。
労働基準法119条
次の各号のいずれかに該当する者は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号 (略)第20条(略)の規定に違反した者
20条は解雇の予告義務です。
解雇予告手当を請求しても払わなければ、労働基準法違反で労基署に申告できる
解雇予告なく解雇して解雇予告手当を支払わないことは労働基準法違反です。
労働者は労働基準法違反を労働基準監督署に申告することができます。
労働基準法104条(監督機関に対する申告)
事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
裁判に訴えて解雇予告手当の他に付加金の支払いも請求できる
解雇予告せずに解雇して解雇予告手当が払われない場合は裁判に訴えて請求することができます。
裁判に訴えて解雇予告手当を請求する場合は、解雇予告手当だけでなく付加金の請求ができます。
裁判所は解雇予告手当と同額の支払いの付加金の支払いを命じることができますので、会社が解雇予告手当ての支払いを拒否し続けていると、最終的には解雇した労働者に解雇予告手当の2倍の金額を会社は払わなければならなくなります。
労働基準法114条(付加金の支払)
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第9項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から5年以内にしなければならない。
解雇するには【予告】が必要
労働基準法20条(解雇の予告)
(1項)使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30前にその予告をしなければならない。
30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2項 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3項 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。
労働基準法19条
(1項ただし書き)ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2項 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
会社は労働者を解雇するには、30日前に解雇予告をしなければならない
会社が労働者を解雇するときは、少なくとも30日前に解雇を予告する義務があります。
労働者を即日解雇するには、会社は解雇予告手当・30日分以上の平均賃金を払わなければならない
もしも30日前に解雇予告をしないで、即日解雇するときには、少なくとも平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務があります。
解雇予告と解雇予告手当の併用
30日前に解雇予告をしないで、25日分の平均賃金を支払うことで5日後に解雇すると予告することもできます。
解雇予告がいらない解雇
【労働基準監督署長の認定を受けた解雇】天災事変で事業継続不可能、労働者の責めに帰すべき自由
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合
・労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合
この2つの場合は、解雇予告せずに解雇できます。
しかし、2つに当てはまる場合でも労働基準監督署長の認定を受けない限りが解雇予告が必要です。
労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合、就業規則の懲戒解雇規定に該当しないと無効ですが、
就業規則の懲戒解雇規定に該当している解雇の場合であっても解雇予告が必要です。
就業規則の懲戒解雇規定に該当した解雇である場合でも、解雇予告が必要ないのは労働基準監督署長が認定した場合だけです。
会社が求めても、労働基準監督署長が簡単に認定することはありません。
解雇予告がいらない解雇 | |
---|---|
1 | 天災事変その他やむを得ない自由のために事業の継続が不可能となった |
2 | 労働者の責に帰すべき事由による解雇 |
1・2どちらの場合でも、労働基準監督署長の認定がなければ解雇予告が必要 |
解雇予告の対象とならない労働者
解雇予告の適用が除外される労働者 | (解雇予告の適用除外労働者でも、解雇予告の適用の対象となる場合) |
---|---|
日々雇い入れられる者(日雇い労働者) | (1ヶ月を超えて引き続き働いた) |
2ヶ月以内の期間を定めて使用される者 | (定めた期間を超えて引き続き働いた) |
季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者 | (定めた期間を超えて引き続き働いた) |
試の試用期間中の者(試採用期間中の労働者) | (14日を超えて引き続き働いた) |
解雇予告があっても、解雇が有効になるわけではない
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
客観的合理性・社会通念上の相当性がない解雇は、30日前の解雇予告あるいは平均賃金の30日分以上の解雇予告手当が払われた場合でも、解雇は無効です。
解雇予告によって解雇が有効になるわけではありませんから、解雇に納得できないときは解雇無効を主張できます。
こちらの記事を参考にしてください。
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【編集後記】
土曜日は障害年金請求の実務研究会に参加、日曜日は障害年金の無料相談会。
この週末は2日とも障害年金の実務で過ごしました。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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