「内向型」労働者が働く上でのトラブル(労働問題)に遭ったときに、公的機関である労働局(厚生労働省)と労働委員会による「あっせん」での解決をお勧めしています。
「あっせん」による解決をお勧めする理由と対象となる「個別労働関係紛争」とはなにか?について紹介します。
Contents
「内向型」労働者へ労働局・労働委員会「あっせん」をなぜ勧めているのか?
労働問題のトラブルに遭ってしまったときに、あなた自身が会社と直接話し合っても(あるいは話し合いそのものを会社に拒否されてしまって)、解決が思うように進まない。
そんな場合でも、他にさまざまな解決方法があります。
たとえば
・団体交渉(労働組合と会社との直接交渉)
・民事訴訟(裁判所)
・労働審判(裁判所)
・あっせん(労働局・労働委員会)
など、あなたと会社との直接話し合う以外にも、いくつもの解決方法があります。
【労働組合による団体交渉】
働いている会社に労働組合がないのでイメージがわかないという方もいらっしゃると思います。
しかし、労働組合は憲法によって保障された人権の1つであり大切な存在です。
私自身も労働組合の役員として約20年活動してきた経験があります。
会社に労働組合がなかったり会社にある労働組合が1人ひとりの個人の問題に取り組まない場合でも、1人で加入できる労働組合があります。
労働組合が団体交渉を求めると会社は拒むことができませんので積極的な解決をめざすことができます。
【裁判所による「民事訴訟」「労働審判」】
ドラマにも出てきますのでイメージがわくのではないでしょうか?
裁判というと弁護士に依頼した大事件というイメージがあるかもしれませんが白黒つけた判決ではなく和解という結果もあります。
通常の民事訴訟という裁判以外にも労働審判という制度もあります。
こちらは訴訟とはちがい労働問題を解決する方法としてとても身近な制度です。
【労働局や労働委員会による「あっせん」】
労働審判であっても裁判所と聞くと敷居が高く感じてしまうという方には、行政機関による「あっせん」という解決方法があります。
裁判が多くの時間と費用がかかることに比べると、労働局や労働委員会の「あっせん」は手続きが早いのも特徴です。
解決までの期間を中央値で見ると、労働局による「あっせん」は約2ヶ月、労働審判は約5ヶ月、裁判上の和解は約14ヶ月です。
(2014年4月20日労働政策研究報告書 No.174独立行政法人労働政策研究・研修機構)
2018年度労働局による「あっせん」申請をした5,201件のうち98.5%が労働者からのものです。
「あっせん」という制度が労働者(あなた)にとって身近な解決方法であることがおわかりいただけるのではないでしょうか?
「内向型」労働者の方の中には、直接対決・争うのが好きではないという方が少なくありません。
そこで、闘争ではない方法がいい、公的機関の中でも裁判所を利用したくはないという方には行政(労働局や労働委員会)が間に入った話し合いによる解決方法「あっせん」をお勧めしています。
労働局・労働委員会による「あっせん」申請はあなた自身で行なうことができます。
あなた自身で申請手続きをするのではなく、あなたの代理に手続きを依頼したい場合は、特定社会保険労務士を代理人とすることができます。
代理人となった特定社会保険労務士は「あっせん」申請から和解契約の締結まで、あなたの代わりとなって手続きをすすめます。
労働局・労働委員会による「あっせん」。個別労働関係紛争で何が対象となるか?
個別労働関係紛争とは?
「個別労働関係紛争」。聞き慣れない言葉が出てきました(^^)。
労働者と会社(使用者)との間に生じた労働条件などに関する紛争。
労働条件その他労働関係上の問題について、個々の労働者と 事業主の間で、お互いの主張が食い違っていること。
あなたと会社との働く上でのトラブルのことだとイメージしてみてください。
あなたと会社との働く上でのトラブルの中で労働組合が関わっていないことが個別労働関係紛争です。
労働組合が関わる働く上でのトラブルは集団的労働関係紛争です。
「個別」とはあなた自身(個人・1人)と会社、「集団」とは労働組合と会社のことです。
労働局・労働委員会による「あっせん」の対象となる個別労働関係紛争は?
- 解雇、雇止め、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争
- いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争
- 退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争
- 会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止など労働契約に関する紛争
あなたが働く上で起きた会社とのトラブルのさまざまな場面で「あっせん」を求めることができます。
下の図は2018年度の労働局による「あっせん」を申請した件数と内容です。さまざまな内容で申請されていることがわかります。
賃金未払いなどの労働基準法違反は労働局では紛争調整委員会による「あっせん」は行わず労働基準監督署による監督業務が行われます。
会社の労働基準法違反の申告を労働基準監督署にします。
労働委員会によるあっせんは、労働委員会の委員である、公益委員(弁護士、大学教授など)、労働者委員(労働組合役員など)、使用者委員(企業経営者、使用者団体役員など)の三者から各1名がのあっせん員となり行われます。
労働局の紛争調整委員会のよるあっせんは、紛争調整委員会の委員である弁護士・社会保険労務士や大学教授など労働問題の専門家が担当して行われます。
労働局・労働委員会による「あっせん」の対象とならない個別労働関係紛争は?
- 労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争
- 裁判で係争中である、または確定判決が出ているなど、他の制度において取り扱われている紛争
- 労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争
など、これらは「あっせん」の対象にはなりません。
労働者からのあっせん申請の結果、解雇撤回で双方合意・解決したケース
労働者 Aさん、は会社から業績不振による業務縮小を理由に解雇を告げられた。
Aさんは会社の対応に納得できないとして、「解雇の撤回を求めてあっせんを申請した。
(あっせん経過)
会社は「業績不振により人員削減が避けられないため、対人関係に問題があるAさんに解雇を告げた。」と主張したが、あっせんの結果、会社がAさんに対する解雇を撤回することで双方が合意し、解決した。
【編集後記】
「内向型」労働者のあなたに、労働局や労働委員会での「あっせん」による解決をお勧めしました。
しかし、それ以外の例として紹介しました解決方法も検討していただければと思います。
役員として長年活動してきた経験から言っても労働組合での解決方法は1つの選択肢に加えてほしいところです。
そして、行政も司法もどちらも公的機関です。労働局や労働委員会は行政の機関、裁判所は司法の機関です。
裁判所というととても敷居が高く感じますが、司法も行政もどちらも公的機関で私たちのためにありものです。
裁判所による解決でも民事訴訟だけでなく労働審判もあります。「あっせん」以外にも労働審判も解決方法として検討に入れてみてはいかがでしょうか?
私(特定社会保険労務士・小倉健二)は労働審判のお手伝いはしておりませんが、労働審判のお手伝いをしている方も知り合いにいますので無料紹介いたします。そして、労働審判には参加は認めてもらえませんが私自身も裁判所であなたといっしょに控室にいて応援します。
労働局や労働委員会での「あっせん」、裁判所での労働審判。どちらも身近な労働問題の解決方法として検討していただければと思います。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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