【労災保険】労基署は「労働者」と認めず、労災保険審査官が認めた事例

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労災保険からの給付を請求したものの、労働基準監督署から不支給の決定がでた。
あなたは、不服申立てができます。

労災保険給付の不服申立ては労災保険審査官への審査請求、
審査請求の決定への不服申立ては労災保険審査会への再審査請求ができます。

審査請求をして労災保険審査官が不支給の決定を取消した、つまり労災保険給付をすると決定した事例を紹介します。

形式上は労働契約とはなっていない牧場長。自宅から牧場に向う途中、自動車で事故を起こしケガをした

労働者災害補償保険法7条1項

この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

1号 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

2号 複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。以下同じ。)の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)に関する保険給付(前号に掲げるものを除く。以下同じ。)

3号 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

4号略

労災保険の給付は「労働者」が受けるものです。

労働者であると認められないと労災保険からの給付を受けられません。

労働者であるか労働者でないのか?
この労働者性の判断は立場の名・契約書の名称ではなく実態で判断されます。

労働者性については、こちらの記事で紹介しています。
労災保険の給付がされる「労働者」の範囲はとても広い。契約の名称ではなく実質で判断。

牧場長として働いていた方が自宅から牧場に向かっている途中に自動車で事故を起こしてケガをしたので労災申請しました。

ところが、労働基準監督署からでた決定は労災保険給付の不支給でした。

この方は労働者ではないと労基署が判断したからです。

形式上は労働契約とはなっていないが、会社の指揮管理下でほかの従業員と同じように働いていた労働者であると主張して、労働基準監督署の労災保険給付を不支給とする決定に不服申立てをしました。

労災保険給付の不服申立ては2審制になっています。

1審 労働基準監督署が決定した不支給への不服申立ては、労災保険審査官へ審査請求をします。

2審 労災保険審査官の決定への不服申立ては、労災保険審査会への再審査請求をします。

労災保険給付の決定への不服申立て

労災保険給付についての不服申立て。詳しくは、こちらの記事で紹介しています。
労災保険】不支給の決定。納得できないときは不服申立てる

労働者【ではない】労働基準監督署が判断した理由

労働基準監督署が「労働者ではない」と判断した理由
1 請求人は、別の牧場を個人として所有・運営しており、会社もそれを容認していたから、会社の業務指示に対する諾否の自由が全くなかったとは言えない。
2 請求人は、元々個人で牧場を所有し、牧場運営全般に係る経験があったから、指揮命令を受けなくても特に支障はなかったから、事業主から請求人に対して、日常業務において具体的な指揮命令があったとは認められない。
3 タイムカードは打刻していたが、労働時間の取り決めを交わしておらず、出退 勤や時間管理は一切行われておらず、正午に出勤することもあり勤務時間の面で拘束性があった事実は認められない。
4 報酬については、請求人の希望に沿って決められた経緯があり労務対償性は極めて乏しい。また、会社内の会計処理において、賃金ではなく委託費として処理されていて、所得税が給与所得として源泉徴収されていない。また、労働保険料の適用対象者として算定基礎額に含まれていない。
1〜4の理由から 請求人は事業主の指揮命令下にあったとは認められず、報酬の労務対償性も認められない。したがって労働者とは認められないので不支給とした。

「労働者【である】労災保険審査官の判断

労災保険審査官が「労働者である」と判断した理由
1 会社社長や常務からの業務指示は、請求人の牧場運営や作業方針に反する指示であった場合でも拒否することはできず諾否の自由は無かったものと認められる。
2 日常的な作業を含めた具体的かつ詳細な指示が組織的に頻繁に行われている実態が認められ、2万円以上の買い物は会社の許可が必要とされたことから、請求人は指揮命令を受けていたものと認められる。
3 請求人は、自身が作成した作業予定表に従って作業を実施しており、会社は、作業予定表及びタイムカードにより、請求人に一定の労働時間が必要であることを認識していたと認められらるから、労働時間の拘束性が全くないとは言えない。
4 請求人は自らの判断のみによって補助者を雇用することはできず、補助者の雇用契約は会社が直接行っていることから、労務提供の代替性は認められない。
5 請求人の報酬月額は、平成○年賃金構造基本統計調査による平均的な学歴、年齢階級等と比較しても大差はないこと、種付け作業及び技術料等は、1回あたりの定額が決まっていて、月毎の実施回数に応じて支払われているから、労務対償性は認められる。
6 請求人の労働時間は作業予定表と一致し、○○牧場以外での就業は困難な状況と判断され、請求人は、自己所有の牧場については、妻と子供に任せて○○牧場の業務に専念していたと述べている状況から、専属性の程度は高いと認められる。
1〜6の理由から 労働者ではないとして監督署長が請求人に対して決定した障害補償給付及び療養補償給付を支給しないという処分は妥当ではなく、 取り消されるべきである。

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【編集後記】

労働基準監督署が「労働者」ではないと判断した理由をみれば、それはそれでそういうものなのかなぁと読めます。

労災保険審査官が「労働者」であると判断した理由をみれば、そうかやっぱり労働者なのかと読めます。

労働者災害補償保険審査官決定事案一覧 平成29年度(平成29年4月~9月)労働者性関係 決定書例

「契約書の名前は労働契約ではないけれど、会社の指揮管理下でほかの従業員と同じように働いていたのだから労働者だ」とあなたが思うなら、

労働者ではないから労災保険の給付を支給しないと決定がでたら不服申立てをしましょう。

何について、なぜ、どのように主張するのか、不服申立てについては、

労災保険給付の請求と不服申立てに取り組んでいる社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょう。

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      小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

      小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 ・30分無料zoomオンライン相談(期間限定)「相談・依頼の申込み」フォームから受付中。 1965年生まれ55歳。連れ合い(妻)と子ども2人。 労働者の立場で労働問題に関わって30年。 2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格
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