「神経症」は症状が長期間持続して、一見重症なものであっても、「障害認定基準」では原則として障害年金の認定の対象とならないとされています。
しかし一方では神経症でも精神病の病態を示しているものについては認定対象となるとされています。
国際疾病分類・ICD-10で神経症に分類されている強迫性障害で障害年金請求したものの不支給決定がされ、審査請求して不支給決定のまま、再審査請求で不支給決定が取消され障害年金が支給されることになった事件「平成27年(国)第447号裁決書」の紹介です。
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強迫性障害【神経症】だから障害年金が受けられないとは限らない
「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(日本年金機構)によると、神経症の場合は症状が長期間持続していて一見重症でも、原則として障害年金を支給する認定の対象とならないとされています。
しかしその一方で、神経症でも臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分 (感情)障害に準じて取り扱うとされ、認定に当たっては、精神病の 病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを 考慮し判断することとされています。
神経症だから障害年金を受けられないとは限らないのです。
分類ID | ICD-10(国際疾病分類)第5章 精神および行動の障害 |
---|---|
F4 | 神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害 |
F40 | 恐怖症性不安障害 |
F41 | その他の不安障害 |
F42 | 強迫性障害<強迫神経症> |
F43 | 重度ストレスへの反応及び適応障害 |
F44 | 解離性[転換性]障害 |
F45 | 身体表現性障害 |
F48 | その他の神経症性障害 |
ICD-10(国際疾病分類)第5章 精神および行動の障害 厚生労働省
社会保険審査会で不支給決定が取消されて、障害年金が支給されることになった理由
神経症に分類されている「強迫性障害」で障害年金請求しましたが不支給決定が出ましたが、
障害年金の不支給決定に納得できず、不服申立てをした事件です。
社会保険審査官へ審査請求しましたが不支給決定が維持されました。
審査請求への結果にも納得できず、
さらに不服申立てを社会保険審査会へ再審査請求しました。
社会保険審査会で審査された結果、不支給決定が取消されて障害年金が支給されることになった。
社会保険審査会「平成27年(国)第447号裁決書」からの紹介です。
医師の診断書、社会保険審査官からの照会への医師の回答
社会保険審査官からの医師への照会
「臨床症状等から精神病の病態を呈していると考えられるでしょうか。また、その判断の理由を併せてご記入ください。」
に対して、医師は、
「精神病の病態を呈している。」
と回答しています。
そして、その理由としては
「重度の強迫観念、強迫行為といっ た症状を認め、不潔恐怖から、洗浄行為を繰り返し、パニックになっては自傷行為及ぶこともある。また強迫観念の内容は妄想に近いものがあり、現実検討能力の低下も認める。」
「投薬、心理療法によって症状は改善傾向にあるものの、 ○○「かもしれない」○○「 になるかもしれない」といった強迫観念を認め、症状は頑強で訂正が困難、妄想に近く、日常生活に多大 の影響を及ぼしている。」とし、
さらに、
「強迫性障害に対して、多数の抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬を使 用してきたが、薬剤抵抗性であり、尚かつ心理療法の効果も乏しく、 治療に難渋している。」と回答しています。
社会保険審査官からの照会に対する医師からの回答を「精神病の病態を示していると認めることができる」と社会保険審査会では判断しました。
本人による申立書
障害年金を請求している本人である「請求人の病歴・就労状況等申立書によれば、強迫症状に苦しみ、興奮して部屋の壁に穴を開けたり、眼球上転が突然起きるなどといった症状の記載」があることが照会への医師からの回答と合わせて、国民年金・厚生年金保険「認定基準の統合失調症に関する認定要領を参酌して障害の程度を判定するのが相当と考えられる」と判断されています。
医師が作成した障害年金請求用の診断書とは別に提出する「病歴・就労状況等申立書」は本人が自分自身の言葉で伝えられる唯一の書類ですからとても大切なものであることが今回の事件の裁決書からも明らかになっています。
今回の事件でも、社会保険審査会が障害年金の不支給決定を取り消す判断をする上で「病歴・就労状況等申立書」の記載内容が評価されています。
病歴・就労状況等申立書については、こちらの記事で紹介しています。
障害年金「病歴・就労状況等申立書」は請求者本人が自分自身の言葉で伝えることができる唯一の書類です。
障害年金を請求して不支給の決定が出ても、納得できなければあきらめずに不服申立てする
神経症の1つ強迫性障害で障害年金を請求したものの不支給決定が出て、不服申立てが行われた事件をこの記事で見てきました。
病名が「神経症」だから障害年金を受けられないということではないのです。
社会保険審査官への審査請求で棄却され、社会保険審査会で不支給決定の取消、つまり障害年金が支給されることになりました。
障害年金を請求して不支給決定が出ても、納得できない場合は不服申立てをすることが大切です。
老齢年金とちがって障害年金は支給されるための要件がわかりづらく、請求の手続のための準備や不支給決定がでてしまったときの手続、不服申立てのための準備や対応が難しいという面があります。
障害年金の請求について困っている方や請求して不支給決定がでて納得できない方は、あきらめてしまう前に、障害年金に取り組んでいる社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょう?
【編集後記】
2019MacBookPro16インチをAppleへ修理に出しているため、2013MacBookAir11インチで仕事をしています。
7年前に買ったPCでメモリも4Gしかないので動きが悪いですが、それでも最新のExcelも動いているので驚きます。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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