労災保険での労災には通勤災害と業務災害の2つがあります。
労災保険で通勤として認められるための要件の1つに「就業に関し」ての移動であることがあります。
「就業に関し」とはどのような意味でしょうか。
通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うこと(労災保険法7条2項)
通勤とは、(1)労働者が、(2)就業に関し、(3)次に掲げる移動を、(4)合理的な経路及び方法により行うこと、です。
(1)労働者が、
労働者性についてはこちらの記事で紹介しました。
「労災保険の給付がされる「労働者」の範囲はとても広い。契約の名称ではなく実質で判断。」
(2)就業に関し、
今日の記事のテーマです。
(3)次に掲げる移動を行うこと
こちらの記事で紹介しました。
「労災保険法で「通勤」となる3つの種類。」
(4)合理的な経路及び方法
こちらの記事で紹介しました。
「Q.労災(通勤災害)になる⁉️ 電車通勤で申請してるけど、自転車で出勤した日に通勤途中に自動車に接触されてケガをした」
今日の記事は、労災保険における通勤の要件(2)「就業に関し、」についてです。
労災保険の通勤の要件である「就業に関し」とは
「就業に関し」とは、移動行為が業務に就くため(出勤)、または、業務を終えたこと(退勤)、により行われるものであることが必要であるという意味です。
「就業に関し」
出勤(業務に就くための移動であること)
移動行為が業務に就くために行われるものであることという場合に、移動を必要とした行為が「業務」なのかどうかが問題になります。その行為が業務行為として認められるかどうかという問題です。
会社や工場に就業日に仕事をしに行くことはもちろんですが、会社から指示で会社に出社前に取引先に物を届けに行くことなども業務になります。
労働組合の集会に参加するために始業時間よりも約1時間半早く会社へ向かった場合も、就業との関連性があると認められた例があります。(昭和52年9月1日基収第793号)
業務行為として認められるかどうかの問題についての記事はこちらです。
「忘年会は労働時間になるの?忘年会にかかわるケガは労災になるのか?」
退勤(業務を終えたことにより行われる移動であること
仕事が終わってすぐに会社から自宅に帰るのはもちろんですが、会社から指示で会社に出た後で取引先に物を届けに行くことなども業務になります。
仕事が終わったあとで、会社でサークル活動や労働組合活動をした後に帰宅した場合も就業との関連性が認められます。
就業と帰宅との直接的関連性を失わせると認められるほどの長時間の場合は、就業との関連性が認められなくなります。
たとえば、業務終了後事業場施設内で、労働組合の用事を2時間5分行なった後で帰宅した場合と慰安会を55分行なった後で帰宅した場合は、就業との関連性が認められました。
業務終了後事業場施設内で行なったサークル活動を2時間50分行なった後での帰宅では就業との関連性が否定された例があります。
【編集後記】
遅刻でも早退でも通勤として認められますので、その点ではご安心を。
1日1新:新宿の初めて入った床屋

小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

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