労働紛争。人証と物証。人証の証拠能力が低いなら普段から物証を意識しよう。

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先週金曜日(2019/1/11)は労働紛争の訴訟・労働審判による解決について弁護士によるセミナーに参加してきました。

使用者側で活動している弁護士の方が講師のセミナーでしたが、労働事件での裁判官による和解勧試、判決(労働審判であれば審判)の現状を前提にして話がされていて、解雇が事実だと認定されれば使用者側(会社)は厳しい状況に立たされることを説明していました。現状を踏まえたバランス感覚のある弁護士の方でした。

裁判官に解雇であると事実認定された場合は、会社側は厳しい局面に立ち、反対に労働者側は有利な局面に立つことになるということです。

裁判官の判断枠組み

証拠→事実認定→法適用

もちろん、解雇であると事実認定されればすべて無効(解雇無効)となるわけではありません。誤解のありませんようにご注意ください。

労働者側に重大な非違行為(債務不履行)があり、公平性のある懲戒をしても改めずに繰り返していて、高い物証をもって解雇に臨んできたなど、解雇が有効となることは当然あります。

しかし、解雇であると事実認定されると、厳しく解雇規制をもった判断を適用します。
解雇であると事実認定されると解雇無効という判断がされる可能性が高くなるということです。

だとすると、労働者を辞めさせたい使用者側(会社)も解雇無効を主張したい労働者側(勤め人)にとっても、事実認定で解雇であると認めれられるのか、会社からの退職勧奨に勤め人の方が真意で応じただけ、あるいは勤め人の方が辞職しただけのことなのだと認められるのかが大きな問題になるということです。

整理解雇の4要件 内容
1 人員削減の必要性 人員削減の必要性が存在すること
(必要性の程度は判断が分かれる)
2 解雇回避の努力 解雇を回避するための努力が尽くされていること
3 人選の合理性 解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること
4 説明協議義務 事前に、説明・協議義務を尽くしたこと

整理解雇の4要件を満たさない整理解雇は労働契約法16条違反(解雇権濫用)となり、解雇は無効となります。

16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

懲戒解雇・諭旨解雇の有効要件
1 懲戒事由および懲戒の種類が就業規則に明定され、周知されていること
2 規定の内容が合理的であること
3 規定に該当する懲戒事由があること
4 その他の要件
(罪刑法定主義類似の原則、平等取扱の原則、相当性の原則、適正手続)

1〜4のいずれかを欠く解雇は、労働契約法15条違反(懲戒権濫用)として無効となります。

15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

整理解雇の4要件、懲戒解雇・諭旨解雇の有効要件は『労働相談実践マニュアル』Ver.7(日本労働弁護団)から引用

整理解雇の4要件 P257~
懲戒解雇・諭旨解雇の有効要件 P276~

解雇である(あるいは解雇ではなくて合意解約であるとか辞職である)という事実認定は何によってされるのか。それが証拠です。

解雇をされたという証拠を提出するのは労働者です。
(その前提としての労働契約関係にあったことの証明も労働者側がします)

解雇だったという証拠を労働者側が提出し、解雇ではないと証明する(あるいは有効な解雇をしたと証明する)のは使用者側です。

裁判官が法適用(判決・審判)する上で重要なのは解雇だったのかどうかの事実認定。事実認定は証拠が重要

裁判官の判断枠組みは<証拠→事実認定→法適用>でした。

判決・審判は、事実認定に基づいて法適用がなされた結果です。
事実認定は、証拠に基づいて行われます。

解雇であったか解雇ではなかったのか、この事実を証明する証拠を出すことが、勝つ(可能性が高くなる)上で重要になります。

人証と物証。人証の証拠能力が低いなら普段から物証を意識する必要がある

人証(人的証拠)

人の供述を証拠とする証拠方法のことです。

物証(物的証拠)

人証(人的証拠)以外の証拠方法としての文書・検証物のことです。

人証の証拠能力が低いなら、物証をふだんから意識して残す必要がある

民事訴訟では証拠能力は裁判官の裁量が大きいです。何を証拠として認めるか、どの程度の証拠能力を認めるかは裁判官が判断します。

しかし、“あのとき社長はお前なんかクビだと言いました”と労働者に言われても、“クビなんて言っていない、こんな仕事をしていたらいつかクビになっても知らんぞといっただけだ”と使用者に言われても、どちらが本当のことを言っているのかわかりません。
会社が社員を証人としても裁判官は“あなたは会社側の人間でしょう、本当のことを言ってるとは限らない”と考えるかもしれません。
人の記憶は本人は間違えないと思っていますが記憶違いということもとてもよくあることです。

だとすると、裁判官がこの証拠があるなら事実だろうと判断できる物証を普段から意識しておくことが必要です。

クビだと言ったが言わなかったかは録音データがあれば物証として認められる可能性は高いでしょう。
普段から口頭でのやりとりではなくmailでやりとりができていればそれも弱いか強いかは別として物証となるでしょう。(会社のサーバーでのmailを会社のパソコンでやりとりしているのだと、労働紛争が起こったあとに削除されてしまうかもしれませんが)
文書は内容証明で送っておけばはっきりと物証として残せます。
ケースバイケースですが、人証だけに頼らず物証を重視していくことが必要です。
物証が弱いからあきらめるということではありませんが、労働紛争が起きる前から、そして起きてしまった後からでも、物証を意識していきましょう。

裁判所を利用した労働紛争の解決はイヤだという方であっても関係ないことではありません。

裁判所を利用して民事訴訟・労働審判をしても勝てるという証拠があれば、裁判所で解決せずに相手側も話し合いで解決していくことに乗ってくる可能性は高くなるでしょう。

結果として、裁判所を利用せずに解決できる可能性も高まると言えます。

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【編集後記】

昨日は明け方から腹痛・腰痛・気持ち悪さに苦しみました。
原因はわかっていて、結石です。
膀胱の入り口まで移動してきているのは先週撮ったCTの結果でわかっていたのですが、いよいよ膀胱に入ったのではないかと思います。
結石は膀胱に入れば2〜3日で体の外に出てくるとの医師の話がありましたので、あと少しです。
最後はどんな痛みが待っているのか。

今日の1日1新
PRONTO IL BAR 御茶ノ水ソラシティ店 冬たっぷりミルクコーヒー
Famima Sweets クリームたい焼きカスタード

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小倉 健二 ( 特定社会保険労務士 )東京都 ※相談は新宿近辺にて

小倉健二(おぐらけんじ) 1965年生まれ53歳。連れ合い(妻)と子ども2人。 労働者の立場で労働問題に関わって30年。 2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格

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