病気やケガで働けないときに失業手当を受けられるか?

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「失業手当」とは雇用保険の「基本手当」のことです。
病気やケガで働けないときに雇用保険の基本手当を受けられるのでしょうか?

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失業手当を受けるために必要なこと

失業手当」と呼ばれることも多いですが、正しくは雇用保険の一般被保険者の求職者給付である「基本手当」といいます。

基本手当の受給3要件

  • 雇用保険の被保険者が離職した。
  • 離職日前に一定の雇用保険の被保険者期間がある。
  • 労働の意思と能力があるが就職できない(失業)状態である。

失業手当を受けるには、失業の状態であることが必要です。

失業の状態とは、ハローワークに行って求職の申込みを行なっていて、就職しようとする積極的な意思があることをいいます。

病気やケガですぐに就職できない場合は「失業の状態」ではありません。

病気やケガで働けないということは、労働の能力がない状態です。

労働の能力がない場合には、雇用保険から「基本手当」を受けとることができません。

雇用保険法4条3項

この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。

ハローワークに求職の申込みをしたあとで、働けない日が月に15日以上なら傷病手当を受けられる

  • 月に14日以内 基本手当
  • 月に15日以上 傷病手当

15日以上引き続いて病気かケガで就職できない場合は、基本手当を受けることができません。

病気やケガで就職できない状態の日があっても14日以内の場合には基本手当が支給されます。

15日以上引き続いて病気かケガで就職できない場合は、基本手当の代わりに「傷病手当」を受けることができます。

傷病手当の金額は基本手当と同額です。

基本手当と傷病手当は、雇用保険の基本手当の受給資格者が離職後、公共職業安定所に行って求職の申込みをした後でなければ受けられません。

雇用保険法15条(失業の認定)

(1項) 基本手当は、受給資格を有する者(次節から第四節までを除き、以下「受給資格者」という。)が失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限る。以下この款において同じ。)について支給する。

2項 前項の失業していることについての認定(以下この款において「失業の認定」という。)を受けようとする受給資格者は、離職後、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならない

傷病手当は求職の申込後に労務不能となること。雇用保険法37条

病気やケガで働けなくなって離職したり、離職してから病気やケガで働けない状態になってしまった。

ハローワークに求職の申込みをする前に病気やケガで働けない状態になってしまった場合には、その状態のままでは基本手当や傷病手当を受けられません。

病気やケガが治って働ける状態になってハローワークに求職の申込みをするまでは基本手当(傷病手当も)を受けることができません。

「傷病手当」と名前がよく似ている「傷病手当金」。

傷病手当は雇用保険からの給付ですが、傷病手当金は健康保険からの給付です。

健康保険の傷病手当金は条件を満たすと退職後も引き続き受け取ることができます。

参考記事 【傷病手当金】退職後も受けるには退職の挨拶でも出勤しない

傷病手当金は働くことができない日について支給される給付ですので、傷病手当金を受けている間はハローワークで求職の申込みができません。

傷病手当金を受けている間は基本手当や傷病手当を受けられません。

ケガや病気が治って傷病手当金を受けなくなってハローワークに求職の申込みをします。

基本手当(基本手当の代わりに受け取る傷病手当も)は受給期間がきまっていて、原則として離職した日の翌日から1年間しか受けられません。

年齢や離職した理由によって基本手当を受け取れる日数の上限(所定給付日数)が決まっています。

たとえば所定給付日数が150日だったとしても、受給期間内で100日しか受け取らなかった場合には、残り50日分は受け取ることができません。

この残り50日分を受け取るためには、受給期間を延長する手続きをしましょう。

病気やケガで就職できない状態が30日以上続いたときには、働くことができなかった日数分の受給期間を延長できます。

病気やケガで就職できない状態が30日以上続いた日の翌日から受給期間延長を申請できます。

受給期間延長の申請は、延長後の受給期間の最後の日まで住所・居所を管轄するハローワークに申請できます。

延長できる期間は最長で3年間です。
もともとの受給期間1年間と合わせて延長後の受給期間は最長4年間になります。

健康保険の傷病手当金を退職後に受けている方は、雇用保険の基本手当を受けるためには受給期間の延長申請をすることを知っておいていただければと思います。

雇用保険法37条

傷病手当は、受給資格者が、離職後公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした後において、疾病又は負傷のために職業に就くことができない場合に、第20条第1項及び第2項の規定による期間(第33条第3項の規定に該当する者については同項の規定による期間とし、第57条第1項の規定に該当する者については同項の規定による期間とする。)内の当該疾病又は負傷のために基本手当の支給を受けることができない日(疾病又は負傷のために基本手当の支給を受けることができないことについての認定を受けた日に限る。)について、第4項の規定による日数に相当する日数分を限度として支給する。

雇用保険法37条8項

第1項の認定を受けた受給資格者が、当該認定を受けた日について、健康保険法(大正11年法律第70号)第99条の規定による傷病手当金、労働基準法(昭和22年法律第49号)第76条の規定による休業補償、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)の規定による休業補償給付、複数事業労働者休業給付又は休業給付その他これらに相当する給付であつて法令(法令の規定に基づく条例又は規約を含む。)により行われるもののうち政令で定めるものの支給を受けることができる場合には、傷病手当は、支給しない。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  
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