「会社を退職して独立開業したい」こんな方からの相談を受けます。
開業してもうまくいかなかったらと思うと不安だという相談です。
退職後に開業した方の不安解消につながる失業手当(雇用保険の基本手当)の特例が2022年7月1日からはじまりました。
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雇わない雇われない独立開業で1人で自由に働きたいが、独立開業したら失業手当は受給できない。
「今働いている会社を辞めたい」という方のなかには、別の勤め先(転職先)を探したいという方もいれば、もう勤め人(労働者)はやめて独立開業したいという方もいます。
転職を希望する方は、要件をみたせば失業手当(雇用保険の基本手当)を受給しながら転職先を探すことができます。
失業手当の受給要件の参考記事
転職ではなく独立開業をする方は、原則として失業手当を受給できません。
失業手当は、離職した方のなかで就職して働きたいという意志とすぐに就職できる能力があって積極的に求職活動をおこなっているにもかかわらず、就職できていないという方が受給するものだからです。
離職後に転職ではなく開業する方は、原則として失業手当を受給することはできないのですが、要件をみたすと「再就職手当」を受給できることがあります。
ハローワークで相談してみましょう。
開業したことをかくして失業手当を受給すると不正受給と扱われて不利益をえる心配があります。事実をかくすことなくハローワークに伝えて相談します。
原則として失業手当を受給できない方 | |
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1 | 家事に専念する方 |
2 | 昼間学生、または昼間学生と同様の状態と認められる等、学業に専念する方 |
3 | 家業に従事し職業に就くことができない方 |
4 | 自営を開始、または自営準備に専念する方 (求職活動中に創業の準備・検討を行う方は支給可能な場合があります) |
5 | 次の就職が決まっている方 |
6 | 雇用保険の被保険者とならないような短時間就労のみを希望する方 |
7 | 自分の名義で事業を営んでいる方 |
8 | 会社の役員等に就任している方 (事業活動及び収入が無い場合は窓口で相談) |
9 | 就職・就労中の方(試用期間を含む) |
10 | パート、アルバイト中の方 (週あたりの労働時間が 20 時間未満の場合、就労した日、収入額の申告が必要となりますが、その他失業している日については基本手当の支給を受けることが可能な場合有) |
11 | 同一事業所で就職、離職を繰り返しており、 再び同一事業所に就職の予定がある方 |
離職された皆様へ(東京労働局)
雇用保険法4条3項
この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。
雇用保険法13条
(1項)
基本手当は、被保険者が失業した場合において、離職の日以前2年間(当該期間に疾病、負傷その他厚生労働省令で定める理由により引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかつた被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかつた日数を2年に加算した期間(その期間が4年を超えるときは、4年間)。第17条第1項において「算定対象期間」という。)に、次条の規定による被保険者期間が通算して12箇月以上であつたときに、この款の定めるところにより、支給する。
2項
特定理由離職者及び第23条第2項各号のいずれかに該当する者(前項の規定により基本手当の支給を受けることができる資格を有することとなる者を除く。)に対する前項の規定の適用については、同項中「2年間」とあるのは「1年間」と、「2年に」とあるのは「1年に」と、「12箇月」とあるのは「6箇月」とする。
退職後に開業した方は失業手当の「受給期間」を延長できる(2022年7月1日〜)
失業手当は原則として離職日の翌日から1年以内に受給します。
1年の受給期間をすぎるとまだ所定給付日数が残っていたとしても残りの日数の失業手当は受給できなくなってしまいます。
受給期間は原則として1年間ですが、病気療養や育児などで就職できない場合には申し出て延長することができるようになっています。
受給期間を延長できる対象に、2022年7月1日からは離職後に事業を開始した方も加わりました。
離職後に事業を開始した方が事業を行なっている期間については、最大で3年間を受給期間に参入しないという特例です。
会社を辞めたあとは、転職せずに独立開業にチャレンジしたいが事業を継続できずに断念することが心配だという方。
離職後に独立開業して残念ながら廃業(休業)した場合でも、廃業後に失業手当を受給しながら再就職をめざすことができるようになりました。
「いざとなれば失業手当を受給できるから、会社を辞めたあとは独立開業」というわけにはいきませんが、離職後は独立開業と決めている方には安心材料となる特例がスタートしています。
離職後に事業を開始した方の失業手当の受給期間を延長する特例の要件
離職後に事業を開始した方の失業手当の受給期間を延長する特例は5つの要件をすべてみたすことが必要です。
離職後に事業を開始した方の失業手当の受給期間を延長する特例の要件 (5の全ての要件を満たす事業である必要があります) |
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1 | 事業の実施期間が30 日以上であること。 |
2 | 「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」のいずれかから起算して30 日を経過する日が受給期間の末日以前であること。 |
3 | 当該事業について、就業手当または再就職手当の支給を受けていないこと。 |
4 | 当該事業により自立することができないと認められる事業ではないこと。 次のいずれかの場合は「4」に該当します。 ・雇用保険被保険者資格を取得する者を雇い入れ、雇用保険適用事業の事業主とよなること。 ・登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等の客観的資料で、事業の開始、事業内容と事業所の実在が確認できること。 |
5 | 離職日の翌日以後に開始した事業であること。 ※離職日以前に当該事業を開始し、離職日の翌日以後に当該事業に専念する場合を含みます。 |
申請の手続きはパンフレットを見て、ハローワークで詳細を確認しましょう。
【編集後記】
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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