労働基準法違反に遭ってる。労基署申告するとどうなる?

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Q.労働基準法違反の申告とは?

労働者は、労働基準関係法令違反がある場合には、労働基準監督官に行政指導を求めること(申告)ができます。

たとえば時間外労働手当をはじめ賃金未払いなどで困っている場合など、労働基準監督署に労働基準法違反の申告ができます。

労働基準監督官に労働基準法違反の申告をしても、会社は解雇にするなど、あなたに不利益な取り扱いをすることは罰則付きで法律で禁止されています。

労働基準法

(監督機関に対する申告)
104条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

(罰則)
119条 次の各号のいずれかに該当する者は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号 ・・・104条第2項の規定に違反した者

労働基準監督署に電話をしたり出かけていった場合は、

労働基準法違反の申告をするので労働基準監督官と話をしますと伝えましょう。

労働基準法違反の申告と伝えないと、総合労働相談コーナーで単なる相談として扱われてしまうかもしれませんので注意しましょう。

相談ではなく申告であることを明確に伝え、申告として受理されたことを明確にするためにも文書で申告した方がより良いです。

(労基法違反申告書の例)

労基法違反申告書

書式例は『労働相談実践マニュアルVer.7』(日本労働弁護団)より引用

Q.労基法違反の申告をすると労基署は何をしてくれるのか?

労働基準監督官 業務運営の基本的考え方

労働基準監督の仕組み

(労働者からの申告について、目立つように青い□線で囲みました)

労働者からの労働基準法違反の申告をきっかけに、労働基準監督官が事業場に臨検するほか、事業主などに来署を求め、直接、事情を聴取するなどの方法により事実関係の確認を行い、その結果、法違反が認められた場合には、是正を図るよう監督指導が行われます。

労働基準法(報告等)

第104条の2 行政官庁は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
2項 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

労働基準監督官は、監督指導の結果、是正勧告を受けた法違反を是正しないなど重大・悪質な事案については、強制捜査を含む司法警察権限を行使して送検します。

(労働基準監督官の義務)

102条 労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。

刑事訴訟法

189条2項 司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。

199条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

2項 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

労働基準法関連法令以外では労基署に申告できないし、労基署は監督指導をできない

労働基準監督官が取り扱う法は労働基準関係法令です。

労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、じん肺法、家内労働法、賃金の支払の確保等に関する法律などの法律を労働基準関連法令といいます。

労働基準関連法令以外で労働基準監督官は監督指導・強制捜査や送検ができません。

たとえば不当解雇、懲戒処分、退職強要、出向・配転、ハラスメント、労働条件の不利益変更、労働契約の内容、契約更新のトラブルなどには、労働基準監督署は監督指導・強制捜査や送検ができません。

労働基準監督署は労働基準関連法令を監督指導する機関なのです。
労働基準関連法令以外の労働問題は労働基準監督署の対象外です。

労働基準関連法令以外の労働問題は労働局によるあっせんを受けることができる

労働基準法関連法令以外の問題について、たとえば不当解雇については同じ厚生労働省労働局管轄下でも労働基準監督署ではなく、労働局長による助言・指導や紛争調整委員会によるあっせんを受けることができます。

労働局によるあっせんについてはこちらの記事で紹介しました。
「内向型」労働者へお勧めしている労働局・労働委員会「あっせん」。対象となる紛争は何?
【不当解雇】内向型タイプで会社に直接抗議ツライなら労働局「あっせん」利用しましょう

【編集後記】

労働基準法違反の申告も労働局によるあっせんの申請もどちらも総合労働相談コーナーでできますが、単なる相談とされないためには、労働基準法違反の申告をすること、労働局によるあっせんの申請をすること、どちらもはっきりと伝えましょう。

とくに「内向型」労働者のあなた。電話あるいは直接に労基署に行ったときは、相談ではなく申告(労基法違反)あるいは申請(労働局あっせん)であることを小声でもいいので遠慮しないで伝えましょう。

今日は相談なの?申告なの?と判断がつかないと相手もイライラした対応をすることがありますが、申告や申請だとはっきりと伝えると案外対応がよくなるようです(^^)。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  
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