交通事故や脳梗塞・脳出血などが原因となって言語障害や肢体に障害の状態があることで、障害年金を請求したいと思っている方がいらっしゃるでしょう。
交通事故や脳梗塞や脳出血などの脳血管障害で請求する障害年金は、肢体の障害や言語機能の障害にかぎられるものではありません。
脳になんらかの障害が生じたことでおきる「高次脳機能障害」も障害年金の対象になります。
Contents
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、病気や交通事故などさまざまなな原因によって、脳に損傷をきたしたために生ずる障害です。
高次脳機能障害は、言語能力や記憶能力、思考能力、空間認知能力などの認知機能や精神機能の障害のことをいいます。
高次脳機能障害について東京都福祉保健局が作成した『高次脳機能障害者地域支援ハンドブック』からみてみましょう。
『高次脳機能障害者地域支援ハンドブック』(改訂第五版)東京都福祉保健局
高次脳機能障害のおもな症状
高次脳機能障害ではさまざまな症状が見られますが、日常生活場面でのの例として以下のようなことがあげられます。
高次脳機能障害のおもな症状 | 日常生活での例 |
---|---|
記憶障害 | 今朝の朝食の内容が思い出せなくなった |
注意障害 | 仕事に集中できなくなった |
遂行機能障害 | 計画が立てられなくなった |
失語症 | 言葉が上手に話せなくなった 人の話が理解できなくなった |
失行症 | 歯ブラシの使い方がわからなくなった |
地誌的障害 | 道に迷うようになった |
左半側空間無視 | 左側にあるおかずが目にとまらず 残してしまうようになった |
高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害があらわれる原因の6〜7割が「脳卒中」(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)です。
脳卒中につづいて多い高次脳機能障害の原因に「脳外傷」があります。
脳外傷(外傷性脳損傷、頭部外傷)による高次脳機能障害 には、交通事故、50歳以上では転倒・転落事故が多くみられます。
頭が強く地面や車に打ち付けられると、前頭葉や側頭葉が損傷されやすく、記憶障害や性格の変化など社会的行動障害があらわれやすくなリます。
脳卒中や脳外傷のほかにも、高次脳機能障害があらわれる原因には、低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎・脳症などの感染症などがあります。
高次脳機能障害により日常生活・社会生活に制約がある場合は障害年金を請求できる
高次脳機能障害により、日常生活又は社会生活に制約がある場合は、障害年金を請求できます。
高次脳機能障害は、障害年金の認定対象となる障害です。
障害年金における高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指します。
障害年金の認定基準では、高次脳機能障害について以下のように記載しています。
その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。
なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。
また、失語の障害については、本章「第6節 音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定する。
【障害年金】高次脳機能障害の障害認定基準
障害年金を受給するには、障害の程度が障害認定日またはそれ以降に1級2級3級にあてはまることが必要です。
初診日に厚生年金被保険者でなかった方は障害等級3級では障害年金を受給できません。
初診日に厚生年金被保険者だった方は障害等級3級で障害厚生年金を受給できますが障害基礎年金は受給できません。
初診日の前日に国民年金の保険料の納付要件を満たしている方で、初診日に厚生年金の被保険者であった方は障害厚生年金と障害基礎年金を、それ以外の方は条件をみたすと障害基礎年金(国民年金)を受給します。
障害年金の認定基準では、高次脳機能障害は症状性を含む器質性精神障害に含まれます。
症状性を含む器質性精神障害による障害等級が障害認定基準に例示されています。
障害認定基準「第8節/精神の障害」日本年金機構
障害等級にあてはまる障害の状態が例示されていますが、内容は抽象的な表現です。
具体的には、医師によって記入された障害年金請求用の診断書の内容と請求者が記載した申立書(病歴就労状況等申立書)によって判断(審査)されます。
請求をするにあたっては、障害年金請求に取り組んでいる社会保険労務士に相談するとよいでしょう。
高次脳機能障害による障害年金請求は家族など協力者がいると心強い
高次脳機能障害は、病気や交通事故などが原因となった脳の損傷によって生ずる障害です。
高次脳機能障害では、注意障害、遂行機能障害、記憶障害、言語障害、視空間認知障害、易怒性、自発性低下、自己中心的衝動性、病識低下などの症状がみられます。
症状の1つである病識低下によって、ご本人が自分自身の障害に気がついていない(病識の欠如)ことがあります。
家族や援助者などが認識している障害について、障害年金請求用の診断書を記入する医師に伝える、申立書(病歴就労状況等申立書)に記入するなど、障害年金請求するうえで協力者の方がいると心強いものです。
障害年金請求にとりくんでいる社会保険労務士に請求手続きを依頼する場合も、障害年金請求者ご本人だけでなく協力者の方もいっしょに相談することで、日常生活や働く上での制約がより明らかになることが期待できます。
【編集後記】
夏の暑さの厳しさがやわらぎました。34℃の予報の日もありますが連日の猛暑は今年はもうないでしょう。
もうすぐスポーツの秋、私は都心をはなれて自然の中をゆっくりと走るポタリング(自転車散歩)で楽しみます。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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