仕事で壊した機材を全額弁償しろと言われたらどうしたらいいのか

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「工事現場撮影中に会社のカメラを落として壊れた!会社になんて言われるんだろう」

業務上の過失で労働者が使用者に損害を与えた場合の損害賠償は制限される

会社は機材など必要なものを準備し、労働者が労働力を提供することで労働がなりたちます。

会社は機材など必要なものを準備し労働者に指揮命令し、労働者は会社の指揮命令によって機材を動かすなど業務を遂行します。

機材などは動かすことによって壊れる可能性があるものなのですが、実際に動かすのは労働者ですから、実際に壊してしまう可能性があるのは労働者です。

機材などは壊れる可能性があるものですから、会社は保険に加入するなどリスクを軽減することができますが、「保険に加入せず労働者に弁償させればよい」となれば負担は労働者にのしかかることになります。

会社は機材や労働力など必要な費用を投入して、利益をえることをめざして事業を行ないます。

事業では大きく利益をえることもあれば、利益がえられないこともあります。

事業で利益が大きく出たからといって、労働力を提供した労働者がその分の利益をえるわけではありません。

事業で利益がでても労働者の賃金よりも会社の内部留保が大きくなることを会社は問題としません。

事業の利益は会社のものだからです。

事業の利益は会社のものとなるのに、事業活動で損失がでたときは労働者に責を負わせるのは不公平であり信義則に反するので、業務上の過失で労働者が使用者に損害を与えた場合の損害賠償は制限されることになります。

事業活動により利益をえている会社が、事業活動によるリスクを負担すべきだという報償責任の要請があります。

仕事で機材を壊してしまって会社から弁償を求められても安易に応じない

賃金はその全額を労働者に支払わなければならないことが法律でさだめられています。

労働者が仕事で機材を壊して会社に損害が発生したからといっても、弁償代を賃金から差し引くことは違法(賃金の全額払い違反)です。

労働基準法24条(賃金の支払)

(1項)賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

2項 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

会社からの求めに応じて労働者が自分の意思でお金を支払い弁償することは自由ですが、納得できない場合は労働者は会社にお金を支払わなければならないわけではありません。

たとえば、壊れやすい機材を使って事業を行なって利益を求めている会社が労働者に不注意があったからといって、労働者が弁償させられてはたまりません。

人で混み合う店でプラスチックではなく割れやすい皿に入った料理を労働者に運ばせて、周りに気をとられてうっかり皿を落として割った労働者が弁償させられてはたまったものではありません。

ささいなミス(軽過失)で弁償を求められても、納得できなければ支払わないという選択があります。

会社が弁償代として労働者から強制的にお金を受けとるためには、損害賠償請求の裁判をおこさなければなりません。

労働者に対して損害賠償請求する裁判を会社がおこしたとしても、損害賠償そのものが認められるとは限りません。

労働者の過失が認められた場合でも、損害の全額を賠償することにはならないというのが判例です。

たとえば、会社が行なう事業で労働者が起こした自動車事故による損害で、会社が労働者に対して損害賠償の請求が許されるのは、信義則上、損害の一部についてだけにすぎないとされた判例があります。

 石油等の輸送及び販売を業とする使用者が、業務上タンクローリーを運転中の被用者の惹起した自動車事故により、直接損害を被り、かつ、第三者に対する損害賠償義務を履行したことに基づき損害を被つた場合において、使用者が業務上車両を多数保有しながら対物賠償責任保険及び車両保険に加入せず、また、右事故は被用者が特命により臨時的に乗務中生じたものであり、被用者の勤務成績は普通以上である等判示の事実関係のもとでは、使用者は、信義則上、右損害のうち4分の1を限度として、被用者に対し、賠償及び求償を請求しうるにすぎない。

昭和49(オ)1073 裁判所

仕事で機材を壊して会社に弁償しろと言われたら『ポケット労働法2022』(P46)を見せる

仕事で機材を壊してしまって会社から弁償しろと言われたら、労働基準法24条で賃金(給料)から弁償代を差し引くことは禁止されていて違法であることを伝えましょう。

そして、弁償(損害賠償)することに納得できないときには弁償しないことを伝えます。

裁判に訴えて損害賠償請求することはできるが、ささいなミス(軽過失)では損害賠償請求が認められないこと、労働者に過失があって機材が壊れた場合であっても会社から労働者への損害賠償請求は制限されることを伝えましょう。

それでも、会社が納得しないときには『ポケット労働法2022』を見せましょう。

『ポケット労働法2022』は、東京都が発行している労働者向けの労働法の小冊子です。

東京都内の6つの労働相談情報センターで無料で受けとることができます。

近所の区市町村役場などで配布しているところもありますから確認してみるのも良いでしょう。

東京都TOKYOはたらくネットのポケット労働法2022からPDFファイルをダウンロードすることもできます。

『ポケット労働法2022』P46には「労働者の損害賠償責任について」説明されています。

東京都が発行している冊子に記載されていることなので、

「お前が勝手なことを言っているだけだ!」とは会社も言えません。

労働者に対しては強気な会社も「東京都」など「お上」(行政や司法)には弱いということが多く、思っている以上に効果があります。まずは試してみましょう。

それでも、「全額弁償しろ!」などと会社が言い続けてくるならば、東京都労働相談情報センターにあっせんを求めることもできます。

東京都労働相談情報センターによるあっせんについての参考記事

2021年度【東京都労働相談情報センター】あっせん解決率72.6%

地方自治体(東京都)ではなく、労働局(厚生労働省)にあっせんを申請することもできます。

労働局は各都道府県ごとにありますが、地方自治体ではなく厚生労働省の機関です。

東京には東京労働局があります。

労働局のあっせん委員は労働問題の専門家であり、労働者と会社の間に入って話を聞いて解決(和解)をめざします。

あっせん委員が労働者と会社の間に入りお互いに納得する結論が出た場合には、和解契約書を作成して話し合いによる解決が成立します。

労働局へのあっせん申請書を提出すること自体はとても簡単ですから、労働者が自分1人で行なうことができます。

申請書の他に労働法の視点から法的な文書を添付したり、あっせん期日においてあっせん委員とのやりとりや和解契約書の作成など不安だという方は、特定社会保険労務士に依頼して代理人とすることもできます。

私(労働者のための社労士・小倉健二)は、労働者からの依頼にかぎってあっせん代理人をしています。

『ポケット労働法2022』を見せて会社に説明しても、進展しない場合は公的機関による「あっせん」での解決も検討してみてはいかがでしょう。

労働者の話を会社がまともに取りあわないというケースは少なくありません。
労働者個人が会社と話し合いを進めて解決することは難しいことが多いです。

しかし、行政など公的機関の話なら聞くという会社は思っているよりも多いものだからです。

労働局の「あっせん」による労働問題の解決についての参考記事

2021年度【労働局あっせん申請3,760件】労働者からの申請が98%

労働局でのあっせん。どんな労働問題を解決できるか?

不当な扱いをした会社と闘わなくていいのか?内向型労働者は「あっせん」による話し合いの解決も選択肢に!

【編集後記】

今日(2022/08/04)は雨が降って久しぶりに涼しい日です。
現在(17:01)の気温は26℃、昨日とくらべると5℃くらい涼しいのでは。
もう夏の暑さは十分堪能したので、このまま秋になってほしいです。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 ・30分無料zoomオンライン相談「相談・依頼の申込み」フォームから受付中。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  

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