2021年度【東京都労働相談情報センター】あっせん解決率72.6%

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個別労働関係紛争を解決するための労働局や労働委員会による「あっせん」。
公的機関による労働問題のあっせんによる解決は、都道府県でも行われています。

東京都(労働相談情報センター)が行なった2021年度あっせんの結果が2022年6月22日に産業労働局から発表されています。

会社とのトラブル(労働問題)をどうやって解決しようか悩む労働者

2021年度【東京都労働相談情報センター】労働相談45,504件・あっせん292件、あっせんによる解決72.6%

東京都は都内6ケ所に「労働相談情報センター」を設置しています。

労働相談情報センターは、労働問題について労働者・使用者のそれぞれからの相談をうけアドバイスをおこなっている東京都の機関です。

2021年度(2021年4月〜2022年3月)の労働相談45,504件、約8割(76.9%)が労働者、約2割(18.8%)が使用者(会社など)からの相談でした。

労働組合がない企業で働く労働者・使用者の方からの相談が9割以上(92.3%)。

労働相談情報センターは、労働組合がない会社の労働問題の相談先として機能していることがわかります。

正社員からの相談が約半数(52.3%)、残り半数がパート・アルバイトや契約社員など幅広い契約の形態で相談されています。

労働相談にかかる時間は8割以上(85.5%)が30分未満、約2/3(65%)が電話相談です。

東京都内で働く労働者の方にとって、労働相談情報センターは電話で短時間で相談できる東京都の機関であることを知っておいていただければと思います。

2021年度の労働相談45,504件のなかで「あっせん」が行われた件数は292件

2021年度東京都あっせん件数

労働相談及びあっせんの概要 (令和3年度)東京都産業労働局雇用就業部労働環境課

労働相談情報センターによる「あっせん」とは、労働問題をめぐる労使間のトラブルについて労働相談の中で、労使だけでは自主的な解決が難しい問題について調整してほしいとの要請を受けた場合に、第三者としての立場で労働相談情報センターが労使間の自主的な解決に向けて手助けを行うことです。

東京都労働相談情報センターあっせん

Q. あっせんという制度があると聞いたのですが…

A. 当センターでは、労働問題をめぐる労使間のトラブルについて労働相談を受ける中で、労使だけでは自主的な解決が難しい問題について調整してほしいとの要請を受けた場合、センターが第三者としての立場で労使間の自主的な解決に向けて手助けを行います。これを「あっせん」と言います。
なお、センターはあくまでも労使間の調整役であり、代理はできませんので、あらかじめご承知おきください。

労働相談情報センター

あっせんが行われた292件のうち解決(紛争当事者の間で合意)が212件でした。

あっせんによる解決率が72.6%、かなり高い割合で解決できていることがわかります。

2021年度東京都あっせん解決内容別件数

あっせん解決の内容は「金銭」解決が約半数(45.3%)を占めていますが、「謝罪」(2.4%)をふくめて金銭以外の解決も行われています

2021年度東京都あっせんの内容

あっせんの内容は、退職(13.4%)・解雇(10.8%)・雇止め(6.4%)と労働契約終了に関する内容が全体3割(30.6%)を占め、職場の嫌がらせ(11.4%)など人間関係(15.1%)が続いて多くなっています。

労働契約の終了、人間関係以外にも、幅広い内容であっせんが行われています。

「労働相談情報センター」とよく似た名前の機関に「総合労働相談コーナー」があります。

「労働相談情報センター」は東京都(東京都産業労働局)の機関ですが、「総合労働相談コーナー」は厚生労働省(労働局)の機関です。

名前は似ていますが、東京都と国、それぞれ別の機関です。

都道府県単位で設置された厚生労働省の機関である「労働局」によるあっせんについての参考記事はたとえばこちら

不当な扱いをした会社と闘わなくていいのか?内向型労働者は「あっせん」による話し合いの解決も選択肢に!

「内向型」労働者へお勧めしている労働局・労働委員会「あっせん」。対象となる紛争は何?

2021年度あっせん解決事例(東京都労働相談情報センター)

東京都(産業労働局)から2021年度に実際に行われたあっせんで経血した事例が紹介されています。2つの事例を見てみましょう。

コロナの影響でシフトがなくなり、休業支援金申請
内容 相談者は、小売店に勤務するアルバイト社員であり、週4日の勤務シフトで稼働し ていた。緊急事態宣言等の影響により会社業績が悪化してきたことを理由として、5 月に会社から退職を勧奨され、話し合いの結果8月末までで雇用契約を終了とするこ とで合意した。しかし、会社の業績が予想を超えて更に悪化し、7月以降のシフトを全てキャンセルされたため、賃金補償を求めてセンターに来所した。
あっせん結果 センターが会社に事情を聴いたところ、会社は、週4日の勤務シフトであることや 8月末までの雇用の約束をしたことなどを認めた。しかし、現在の経営は非常に厳し く、他のアルバイトのシフトも大きく減らしてもらっている状況で、資金繰りも苦し いと述べた。また、賃金補償が必要であることは理解できるが、当社には払える体力 がない、とした。センターは、休業手当などの法的一般論を説明しつつ、何らかの補 償について検討するよう対応を求めたが、会社は「困難である」との回答であった。 センターが相談者に会社の状況を伝えたところ、相談者も会社の苦境に理解を示し た。そこでセンターは、今回のシフトのキャンセルに関しては、国の休業支援金の申 請が可能であることを労使に提示したところ、双方とも申請によってその間の補償に 充てたいという意向を示した。センターが休業支援金制度の説明、申請方法などを教 示したところ、相談者が申請書類を作成、また会社が休業の証明を行って実際に申請につながったことで解決した。

同僚との折り合い悪く、暴行沙汰をきっかけに退職勧奨に
内容 相談者は、清掃業務のアルバイトとして採用され1年半ほど勤務している。入社直 後から同じ現場の先輩アルバイトとの折り合いが悪く、業務の進め方で口論になることがたびたびあった。ある日、日常業務の引継ぎの件でとうとう口論に留まらず先輩 アルバイトから肩を突かれるなどの暴行沙汰が起こった。会社は、このことが起こっ たあと、相談者に対し退職勧奨を行った。相談者は、その同僚の個人責任までを追及 するつもりもないが、この状況を放置し、最終的に退職勧奨してくる会社の不誠実な 対応には大いに不満があるとして、センターに来所した。
あっせん結果 センターが会社に事情を聴いたところ、これまでに何度か改善をしてほしいとする 要望はあったが、本人は遅刻や欠勤が多く、そのことで同僚にも少なからず迷惑をか けていたのであり、そもそも本人の責任が大きい問題だと考えている、とのことだった。センターは、労働者からのハラスメントに関する相談・苦情があった場合、会社 は適切に対処し、職場環境改善に対応する義務があることを説明した。 その後も会社は、相談・苦情対応に落ち度はなかったとの主張を繰り返したが、セ ンターがこの問題を長く引きずることは労使双方にとって益のないことを幾度か説明した結果、会社は、相談者が退職することを条件に退職慰労金名目で解決金を支払うことを提示した。これに対し相談者は、会社の提示する金額に不満があるとして、会社提案を拒否した。 その後も引き続き労使間の調整を続けた結果、相談者が「これ以上の長期化は自分にとって得することはない」として、会社提示の退職条件を受け入れ、解決した。

「あっせん」による話し合いで解決できなければ、他の解決手段へと進むこともできる

労働相談情報センター(東京都)に限りませんが、公的機関によるあっせんを求めてみたものの提示された解決案が本人にとって十分な内容だと思えないこともあります。

これは東京都(労働相談情報センター)でのあっせんに限らず、厚生労働省(労働局)など他の機関でのあっせんも同じことです。

あっせんで提示された解決案に納得できなければ、無理してあっせんで解決する必要はありません。

労働組合に加入して会社と団体交渉を行なう、弁護士に依頼して裁判に訴える、など他の解決手段へ進むことは自由です。

労働組合や裁判で会社と争うのではなく、おだやかに話し合いで解決したいと公的機関に「あっせん」を求めたものの、会社がかたくなな姿勢で十分な譲歩が引き出せなかった。

おだやかな話し合いによる解決ができない相手であることが明らかになったら、他の解決手段へ進む判断ができるということもあるでしょう。

あっせんによる解決を断念して、他の解決手段へと進むことを決意した事例も見てみましょう。

労働組合に加入して団体交渉で解決をめざすことにした方、裁判に訴えることにした方の事例です。

勤務シフト減に伴う社会保険資格喪失
内容 相談者は、情報通信系企業のアルバイト従業員として約5年間働いていた。勤務は 希望制のシフトではあったが、相談者は月から金のフルタイムシフト希望であったため、社会保険加入であった。しかし、上司からのハラスメント的言動などをきっかけ に体調を崩し、勤務シフトを欠勤しがちとなった。そして会社では、欠勤が多くなったことを理由として、希望どおりのシフトを割り振らなくなり、社会保険資格未満の 週間労働時間となった。このことにより会社は、社会保険資格喪失手続きを行った。 相談者は、その後も体調不良が続き、いよいよ休職することになったことで、セン ターに来所した。
あっせん結果 相談者の主張は、社会保険の資格喪失の原因を作ったのはシフトを一方的に減らした会社の責任であり、そもそも労働日数などの契約変更もしていないもので喪失手続 きは誤った対応である、というものであった。センターが会社から事情を聴いたとこ ろ、勤務シフト減は相談者が欠勤がちになったことで希望シフトどおり入れられない という判断であり、会社対応はやむを得ないものである、とのことであった。センターは、社会保険資格喪失は、アルバイト社員にとっては非常に重要な問題であり、 当人との話し合いを丁寧にしたうえで手続きを行うなど、もっと慎重な対応が必要で あったことを助言し、再考を促した。しかし、会社は、全社的にこれまでも同様の対 応をしてきたものであり、今回だけ違う処理はできないとして、資格喪失手続きの取 り消しを拒んだ。 相談者は、任意のあっせん調整ではこれ以上の進展は見込めない、個人加盟労組に加入して団交等での解決を図りたいとして、あっせん終了の申し出してきたことで打ち切った。

親族による退職意思表示
内容 相談者は、営業職として入社したが、ほどなくして、病気により意識不明で倒れ緊 急入院となった。会社は、相談者の親族と話し合いをし、入院当日を以て退職することとした。数か月後、相談者は意識を取り戻した。 会社と親族とで自分の退職を決めたことは納得できない、待期期間中(健康保険の 傷病手当金を受給するために必要な判定期間。療養開始から最初の3日間)の退職日 処理で傷病手当金申請もできないとして、センターに来所した。
あっせん結果 センターが会社に事情を聴いたところ、退職については相談者の親族が熟慮のうえ出した結論で、そうした親族の希望に沿う形で会社も誠意を以て対応したものである、との回答だった。センターは会社に対し、雇用契約の特性や退職の意思表示の重要性などについて説明し、退職日の変更等について検討を要望した。会社は、検討の 結果、やはり退職手続きをやり直すことはできないと回答してきた。 相談者は、これ以上の任意の話し合いは問題の解決を長引かせるだけであるとして、裁判に移行すると表明したことから、あっせんを打ち切った。

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【編集後記】

毎日お酢を飲むと体に良いと聞いて、スプーンに1杯いれて試してみました。
ところが、酸っぱくてとてもとても飲めません。
調べてみると、水や炭酸水で割って飲むお酢ドリンクがあることがわかり、炭酸水で割って毎日飲んでいます。
週末は33度、来週は35度36度と酷暑の予報。
夏バテ防止にも良いようなのでお酢ドリンクを試してみてはいかがでしょう?

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  
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