仕事でケガした労働者に健康保険で治療を受けさせるのは会社の犯罪です

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ケガをして入院と休職をして傷病手当金を受けていた。1年半の傷病手当金を受け終わって、これからの生活について相談したいという話を聞いてみると、仕事でケガをして入院したということ。
そもそも労災保険という制度自体を知らなかったという労働者の方は少なくありません。
しかし、会社が労災保険から給付を受けられることを知らなかったというのは通りません。

健康保険は仕事 通勤以外の病気 ケガで使う

仕事のケガで労働者が4日以上仕事を休んだら、労基署に報告書を遅滞なく提出しない会社は犯罪者

労働者死傷病報告

仕事のケガで労働者が4日以上仕事を休む労働災害が発生したら、会社は遅滞なく労働基準監督署に報告書(労働者死傷病報告)を提出しなければなりません。

労働者死傷病報告を労基署に提出しないことは「労災かくし」として会社は犯罪を犯したことになります。

労働災害に健康保険は使えません 労災かくし は犯罪です

労働安全衛生法(報告等)

100条1項 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

120条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
5号 第100条第1項又は第3項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

労働安全衛生規則(労働者死傷病報告)

97条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

労災保険給付請求の手続きに会社は協力する義務があります

たとえば、労働者が仕事で大ケガをして病院に運ばれ、安静と治療が必要な状態でそのまま入院したとします。

労働者は労災保険から給付を受けられることを知らないかもしれません。

安静が必要な状態で大ケガをした労働者本人が労災保険給付の請求をできるでしょうか?

会社は仕事でケガをした労働者が労災保険給付の請求の手続きをするために、会社が協力する必要がありますよね。

労災保険給付請求の手続きに協力する義務が会社にはあるのです。

会社には労災保険給付請求の手続きに協力する義務とあわせて、労働者が労災保険給付を受けるために必要な証明をする義務もあります。

この労災保険給付を受けるために必要な証明を拒否する場合もありますが、その場合でも労災保険給付の請求はできます。

こちらの記事で紹介しました。

仕事中のケガで入院している。“会社の証明がないと労災保険での医療費負担ゼロに出来ない”と病院に言われた。会社は労災証明拒否しているがどうしたらいい⁉️

労災保険法施行規則(事業主の助力等)

23条 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。

2項 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。

労災保険の給付の請求する権利は、ケガした労働者本人にあります

仕事でケガをしたことを知っていながら会社が労災保険から給付が出ることを労働者に教えないという場合があります。

仕事でケガをして病院で治療を受ける場合は病院で仕事でのケガだと伝えれば本人の支払いが0円(労災保険が治療費を全額払う)になることを、会社がケガをした労働者に伝えないということがあります。

会社は労働災害が起きたことを労基署に報告する義務がありますから、全額労災保険負担で病院で治療受けられることを知らなかったということはありません。

実際には「労災かくし」でしょう。

会社が「労災かくし」をするのは、労災事故が発生した理由(事故の原因)など労働基準監督署の調査を受け、行政指導や刑事告発をされたり、支払う労災保険料が高くなる可能性があるためだと考えられます。

しかし、労災保険法による給付の請求は会社ではなく、ケガをした労働者ができます。

労災保険の保険料は労働者は1円も払わず会社が全額払っていますが、労災保険から受けられる給付の請求は会社ではなく労働者ができるのです。

お前の不注意でケガしたのだから会社に責任はないから、労働災害ではないと言ってくる会社もあります。

しかし、会社に責任があってもなくても仕事でのケガでしたら労災保険給付を請求できます。

そして、労働災害かどうかを判断するのは会社ではなく、労働基準監督署です。

会社がどう言っているかは関係ありませんので、労働者である仕事でケガをしたあなたが請求しましょう。

労働者災害補償保険法7条

この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
1号 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

労働者災害補償保険法12条の8

第7条第1項第1号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
1 療養補償給付
2 休業補償給付
3 障害補償給付
4 遺族補償給付
5 葬祭料
6 傷病補償年金
7 介護補償給付

2項 前項の保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)、労働基準法第75条から第77条まで、第79条及び第80条に規定する災害補償の事由又は船員法(昭和22年法律第100号)第89条第1項、第91条第1項、第92条本文、第93条及び第94条に規定する災害補償の事由(同法第91条第1項にあつては、労働基準法第76条第1項に規定する災害補償の事由に相当する部分に限る。)が生じた場合に、補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行う

【編集後記】

会社によって、親切丁寧に労災保険給付の請求手続きに協力してくれるか、労災じゃないからなどと言って協力しないか、大きく対応が異なります。

ただでさえ、仕事でケガをして治療や生活や今後のことなど大変な状況で自分自身で労災保険の給付請求の準備と手続きをしていくことは大変かもしれません。

「内向型」労働者の方でしたら、ケガの治療と生活の立て直しをする中で、協力的でない会社とのやりとりや行政(労働基準監督署)への請求の準備・手続きを進めることは、いっそう負担となってくるかもしれません。

そんな場合は、私たち社会保険労務士にご相談ください。

あなたからの依頼を受けて、労災保険の給付請求の準備と手続きを社会保険の専門家である社会保険労務士があなたを代理して行ないます。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格  
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